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釣りアンバサダー中川めぐみさんと考える、
愛媛・南予の釣りワーケーション!

愛媛県の西南部、4つの市と5つの町からなる南予地方は、リアス式海岸の広がる宇和海での養殖や段々畑での柑橘栽培など、農林水産業が盛んな地域。釣りの人気もあり、全国から人が訪れます。

今回南予に「釣り×地域活性化」事業に多く携わり、釣りの魅力を全国に発信する「釣りアンバサダー」の中川めぐみさんを招き、釣りを活用したワーケーションの可能性を一泊二日で共に考えました!

 

 

中川めぐみさんプロフィール

1982年富山県生まれ。ITベンチャーや広告代理店で新規事業の立ち上げ、広報などに関わる。その間に趣味として始めた釣りの魅力に取りつかれ「釣り × 地域活性」事業で独立。釣りや漁業を通して日本全国の食、景観、人、文化などの魅力を発見・発信することを目指し、各地で観光コンテンツの企画やPRの仕事に従事。また、漁業ライターとして、グルメニュースやおでかけメディアなどで、釣りや漁業を起点とした記事の執筆を行う。
水産庁の「水産政策審議会委員」「水産物消費拡大実行計画会議委員」「水産女子」も務める。

 

きずなカード購入、いざ宇和島!

松山空港に到着した中川さん。ワーケーションの目的地、南予・宇和島市を目指します。と、その前に、空港内のショップで現在南予で開催中の「えひめ南予きずな博」をお得に楽しめる「きずなカード」を購入します。

 

 

 

えひめ南予きずな博とは

南予地方は平成30年に発生した西日本豪雨災害で多くの被害を受けました。

「えひめ南予きずな博」は、全国各地の皆さんの支援を受け、今もなお復興の道を歩む南予地方の感謝の気持ちを表し、新たな地域の価値の創造を目指して実施するもので、復興をPRするイベント開催だけでなくwithコロナ時代の生活や働き方の変化に対応した、地域の来訪者の受け入れ体制や仕組みを構築しようというものです。

 

カードは一枚500円。「きずな博」開催地の南予各地の加盟店で、割引などの特典を何度でも受けられます。購入記念に写真撮影をしているとそこに一人の男性が・・。

男性:「きずな博行くの?」

スタッフが釣りを目的に宇和島に行くと告げると、

男性:「ワシントン椰子見て!南予っぽいから。段畑も。お菓子は善助餅で・・」

矢継ぎ早に出てくる宇和島情報。この方は空港ショップ内の宇和島真珠販売コーナーで店頭に立つダイマサ真珠の太田政伸社長でした。

 

 

 

太田政伸社長:「釣りなら今からイサキのシーズンで、秋からタチウオ。太刀巻き食べてや。・・これ見て」

おもむろにタブレットで自身が釣った大物タチウオを見せてくれ、あれやこれやと話が弾みました。太田さんの南予・宇和島愛を感じつつ、車に乗り込みます。宇和島までは松山空港から車で高速道路を使い1時間30分ほど。中川さんにお話を聞きました。

 

釣りアンバサダー中川めぐみさんに聞く

――愛媛には何度か来られていますか。

中川めぐみさん(以下、中川):「これで3度目です。今治のしまなみ海道沖でアジやサバ、キジハタを釣ったり、松山でメバルを釣ったことがあります。宇和島ではタイを釣りたいですね!景観も楽しみです」

――コロナ禍以前は年間100回釣りに行かれているとも聞きましたが、いまだに釣り竿は持っていないのですか?

中川:「持っていないです。とにかく気軽に手ぶらで…というのが信条で。それに地域によって釣り方は色々あるので、それを教わりたいなと。常に初心者でいたいという思いがあります。釣りをしない方の釣りへのイメージに、・餌の虫を触らなくてはいけない・竿など道具が必要・朝が早く体力も必要・魚の処理が大変などがあるんです。

釣りをしない方の釣りへのイメージに、
・餌の虫を触らなくてはいけない
・竿など道具が必要
・朝が早く体力も必要
・魚の処理が大変
などがあるんです。

でも私は竿を現地でレンタルして、釣り方を教わりながら虫以外の餌釣りやルアーで釣ります。釣った後の魚をどうするかも、事前に調理してくれる飲食店や宿が無いか、発送するにはどうするかなど、リサーチしてから現地に向かうんですよ」

――コロナ禍もあり、密を避け、釣りをする人も増えていると聞きます。地域と釣り人の関係構築に大事なことは?

中川:「双方に無理のない形で、人やお金が循環する仕組みをつくることでしょうか。例えば地域の外でご飯を買ってきて、地域の資源である魚を釣って、ゴミだけ落として帰っていくような釣り人を、地域の方が気持ちよく迎え入れるのは難しいところがあります。一方で地域側にも釣り人が何を求めているかを考えた受け入れ体制が必要だとも思います。例えば釣り船と飲食店や宿、温泉などの施設が連携して、釣り人がついつい立ち寄りたくなる、宿泊までしたくなるプランをつくれたら、それは双方にとってwin-winですよね。そんな地域は実際にあって、私自身も何年も通っているんです。」

 

仲間とのアジ釣りから「ハマった」という中川さん。釣り初心者の立場に常に寄り添い、釣りに対する愛情を、まるでクーラーボックスに入れているかのように、常にフレッシュに保っています。釣り歴10年。長く続ける秘訣を感じました。ちなみに釣りに出会い、以前の趣味のゴルフは辞めて、バッグも手放してしまったそうです。

さて「料理田むら」に到着です。

 

鯛めしの元祖!津島の六宝で腹ごしらえ

 

 

 

 

 

「田むら」では「地魚日替わり御膳」を注文。御膳の白飯を津島の郷土料理「六宝」に変更します。「きずなカード」の特典で100円引きでいただきます。

「津島の六宝」は宇和島鯛めしの元祖とも言われ、地元でとれた旬の魚(季節によってタイやアジ、ヒラメ、イサキなど)の切り身を「酒・みりん・砂糖・醤油・ごま」からなるタレに漬け込み、溶いた生卵と薬味といっしょにご飯といただく漁師めしです。宇和島鯛めしと共に文化庁に「文化庁100年フード」として認定され、宇和島を代表する郷土料理です。

その他のメニューもボリューム満点!イトヨリダイと酢飯の代わりにオカラを使ったお寿司も、丸寿司と呼ばれる南予地方の郷土料理の一つです。

 

中川:「イトヨリ(ダイ)も好きなんですよ」

イトヨリダイも近場で釣れると知り、期待度の上がる中川さん。いよいよ釣りに向かいます!

 

料理 田むら
愛媛県宇和島市津島町高田甲280-2
営業時間 11時〜14時 17時〜20時/不定休
電話 0895-32-2023

 

いざ宇和海で釣り!釣果は果たして!?

「田むら」さんを後にし、リアス式海岸沿いの山道を車で走ります。向かったのは「津島マリン」さん。途中、カーブから覗く眼下には美しい海が広がります。所々港の桟橋の先に小屋が。

 

中川:「あれ、一体なんだろう。『伊根』みたい景色ですね」

全国を旅する中川さん。宇和海に並ぶ小屋に、日本のベネチアとも称される京都府北部、伊根町の景観を想起したとのこと。 車を走らせること20分。到着した我々を明るく迎えてくれた「津島マリン」代表の「まっちゃん」こと山口将彦さん。

 

 

 

中川:「めちゃくちゃ海が綺麗!小魚が見えますよ」

桟橋の隣に先ほど見たのと同じく小屋がありました。

山口将彦さん(以下まっちゃん):「これは真珠の養殖の作業小屋なんですよ。うちは元々養殖もやっていて・・」

傍ではお父さんが作業をしています。

父:「ほら、アコヤ貝。これ以上大きくならんから出荷せんやつ。」 貝から真珠を取り出して見せてくれました。海に浮かんでいた小屋は、真珠の養殖の作業場だったのです。日本有数の真珠養殖地・宇和島ならではの光景でした。

 

 

 

 

まっちゃん:「今日は鯛ラバで、タイやアマダイ、カサゴ、イトヨリを狙います!最近はシロアマダイがよく釣れています」

中川:「シロアマダイ!?超高級魚ですね!釣ったことないです・・釣りたい!」

 

驚くのも無理はありません。一般にアマダイと言えばアカアマダイのこと。シロアマダイはより高級魚とされ、キログラムあたり1万円を越すこともある魚です。

近年宇和海での水揚げが増えていて、宇和島と同じ南予に属する八幡浜漁港におけるアマダイ取扱量の推移(愛媛県水産研究センター調べ)においても、平成29年までの5年ほどは大体5トン未満で推移していたのが、平成30年が約7トン、令和元年に約12トン、令和2年に約24トン、令和3年に約22トンと推移しています。

俄然期待してしまう中川さん。本来釣竿のレンタルはしていませんが、今回は特別にまっちゃんの私物をお借りします。

 

中川:「鯛ラバは一年ぶりです。初心者の方にも簡単で釣りやすいですよ」 鯛ラバは和製ルアーとも言われる、鉛の重りに仕掛けをつけたもの。海底に落としてリールを巻き上げる作業を繰り返して魚に食いつかせます。

 

 

さて、出港から5分で最初のポイントに到着。半島に囲まれた美しい景色が広がります。早速竿を出す中川さん。船の上から見えるのは数メートル先まで見えるような透き通った海面。

 

まっちゃん:「数日前から黒潮が流れ込んできているんですよ。かなり澄んでいますね・・海中温度が上がるのは良いことなんですが・・当たりが来ませんね・・でも大丈夫です!・・次のポイントに行きましょう!」

 

己を鼓舞するまっちゃん。海中が澄んでいると魚が仕掛けに気付きやすく、警戒されてしまうのです。今日の海はあまりにも澄んでいて、苦戦の予感がします。潮を見極めつつ、次々とテンポ良くポイントを移動しますが非情にも時間は流れます。その時!

 

中川:「ん?・・きました!」

待望の当たりが来ました!竿がしなります。

まっちゃん:「焦らず一定のペースでリールを巻いて下さい!」

中川:「はい!あっ!バレ(逃げ)ちゃいました」

残念ながらこのヒットは姿の見えないうちに逃してしまう結果に。

中川:「あー、あの子は一体誰だったんだろう!」

 

逃した魚を愛おしく「あの子」と呼ぶ中川さん。釣り愛を感じます。その後さらにポイントを変え何度となくチャレンジしましたが、一向に当たりがありません。まさに自然相手の釣り。このような結果もありえます。

 

 

しかし何度も竿を出し、会話を楽しみながら、まっちゃんと中川さんには初めて会ったとは思えない友情が芽生えました。中川さんに釣らせることのできなかったまっちゃんはなんとも悔しそう。 そこでスタッフから明日の早朝に船を出せないかお願いすることにしました。

 

まっちゃん「明日・・必ず釣らせます!」

津島マリンの代表に就任して6年目のまっちゃん。以前は営業職の会社員でした。 このサービス精神とネバーギブアップ精神はそこで培われたのでしょうか。 今日の釣りはいったん終了。沖に上がり、津島マリンさんの持つペンションへと向かいます。

 

絶景の夕焼け、満天の星空の下でバーベキュー!

 

 

 

 

港から山へ少し上がると木造二階建てのペンションに到着しました。夕飯はテラスでバーベキュー。その準備の間にノートPCを広げ仕事をする中川さん。ほどなくすると日が暮れてきました。

 

中川:「綺麗な夕焼け!海と山が近いですね」

 

豊かな自然環境の中で仕事をすることもワーケーションの醍醐味の一つです。

さてバーベキュースタート。肉や野菜の他、宇和海名物のヒオウギ貝や、小魚のすり身を揚げたじゃこ天など、地元の海産物をいただきます。とそこに、まっちゃんが遅れて合流しました。一人の男性を引き連れています。

 

まっちゃん「彼にカワハギを捌いてもらいますね」

 

男性は慣れた手つきで素早くお刺身にしてくれました。肝を解いた醤油につけていただくと絶品です。一体誰なのでしょう。

 

まっちゃん:「彼、増田雄亮くんは毎年宇和島の独身男性の中から選ばれる『パール王子』の昨年の準パール王子なんですよ。真珠養殖をしている生産者であり、アクセサリーを制作して販売もしています」

 

王子様だったとは!包丁を入れる繊細なタッチは、日頃のアクセサリー作りから来ているようです。 その後バーベキューを囲み、交流する中川さんとまっちゃん、準パール王子増田さん。釣りやお魚、地域活性。尽きない話に夜はふけていきます。

 

 

 

 

ふと気づくと、空には満天の星たちが。いまにもこぼれ落ちそうな星たちに、明日の大量に釣れた魚の姿を重ね合わせ、願うのでした。

 

中川・まっちゃん:「明日、シロアマダイが釣れますように!」

 

パールショップにじいろ
インスタグラム

 

再び宇和海!果たしてシロアマダイは釣れるのか!?

二日目の朝、時刻は6時30分。再び海へと向います!次の目的地へは9時30分には出発しなくてはなりません。時間との勝負です。

 

 

まっちゃん:「昨夜はあの後シロアマダイの生態についてしっかり勉強しました!」

 

以前のお客さんには、シロアマダイを5回連続で釣り上げた方もいたそうです。ポイントをアマダイに絞り、本日の釣りスタート。潮はこれから干潮に向かう「下潮」で絶好のコンディションとのこと。しかしそれでもやはり海面の透明度が気になるまっちゃん。

とその時、スタッフの竿に当たりが!しかしすぐにバレてしまいました。海に昨日とは違う雰囲気を感じます。

するとまた別のスタッフにヒット!見事にオオモンハタを釣り上げました!二日目にしてはじめての魚、船上は大いに沸きます!

あとは主役・中川さんに釣ってほしい、誰もがそう思った瞬間・・

 

中川:「きた!!きました!あああ!緊張します!」

 

釣りアンバサダーである中川さんでも、数少ないヒットをモノにしなければならないこの状況では緊張も無理もありません。まっちゃんは胸に手を当て天を仰いでいます。徐々に水面に魚の姿が近づいてきます。

 

 

ん?白い!?

 

まっちゃん:「これは!来ました!シロアマダイです!」

中川:「やった!!」

 

見事釣り上げ、船上が歓喜に包まれます!二人の目にはうっすらと涙が。

有言実行、やったね、まっちゃん!緊張しながらも焦ることなく釣り上げた中川さん!流石です。

 

 

中川:「お刺身、笠松揚げ、しゃぶしゃぶもいいですね・・ふふ」

ご満悦の中川さん。すでに調理のシミュレーションはできています。さらに大物を目指して釣りは続きます。

 

まっちゃん:「まだまだ行きましょう!」

朝一番の張り詰めた空気は一転、和気藹々と釣りを楽しみます。すると・・

 

中川:「きました!・・重い!?」

中川さんに連続ヒットです!再び慎重に巻き上げると・・真鯛です!50cmほどのサイズ。

 

 

中川:「やりました!これは美味しい、食べ頃サイズですね!」

 

真鯛は一定以上のサイズになると大味になることが多いのだとか。お見事です! その後時間いっぱいまで釣りを満喫。スタッフもカサゴと2匹目のオオモンハタを釣り上げ、計5匹の釣果となりました。 早起きは三文の徳。ドラマを生んでくれたまっちゃんに感謝しつつ、お別れの時間となりました。 ありがとう!まっちゃん!

 

津島マリン
愛媛県宇和島市津島町田之浜1486
予約 0895-35-0330/ FAX 0895-35-0245(受付時間 7時~19時)
ホームページ

 

生産者とつながる南予のコワーキングスペース

ドラマチックな朝の釣りを終え、向かったのは宇和島市役所のすぐそばにある、UWAJIMA QUEST(うわじまくえすと)です。南予で大手カレー店のフランチャイズ店の経営を行う大谷晶一さんが立ち上げたコワーキングスペースです。

 

 

 

 

 

 

ここには利用者のコミュニケーションを図るスペースや会議室、キッチン、スタジオ、集中室などコワーキングに必要な施設が揃っています。と、ふと立て掛けられた看板に注目する中川さん。

 

中川:「フライドポテトの看板ですね。どうしてですか?」

大谷晶一さん(以下、大谷):「ジャガイモ農家の会員がいるんですよ。そのジャガイモを調理してイベントで出店しました。会員でメニューの案を出し合ったり、サインのデザインをしてもらったり協働しているんです」

 

 

中川:「私の活用してきたコワーキングスペースの利用者は、プログラマーなどのクリエイターが中心で、一次産業の生産者さんが会員にいるという例は聞いたことがありません」

大谷:「田舎あるあるかも知れませんが、貸しスペースの利用よりもコミュニティに参加する目的の会員が多いですね。水産高校の生徒ともコラボして、私の経営するカレー店のメニューを作ったりもしました。生産者が困っていることをクリエイターが助けてくれたり、個々の会員の強みが他の会員の弱みを補完するコワーキングがシナジーを生むと思っています」

 

とここで、男性が現れました。

大谷:「この方は宇和島市の金瀬聡教育長です」

中川:「えっ。教育長さん!?」

 

ここは行政の重役が土曜日の午前中にふらっと訪れることができる施設。先の高校生や農家さんなど様々な世代、業種の人たちが垣根なくコミュニティを形成しているのが伺えます。
中川さんに、ワーケーション中の「ワーク」についてポイントを聞きました。

 

 

中川:「記事を書く仕事の時にコワーキングスペースを利用したりしますね。集中できる環境は嬉しいです。ワーケーションで大事なことはその土地の人と交流して気づきを得ることだと思います。コワーキングスペースがその役割を果たすと良いですね」

 

自宅やオフィスでは得られない環境が、仕事に好影響を与えることがワーケーションの利点。南予のワーケーションでは一次産業の生産者と交流する機会がありそうです。

 

UWAJIMA QUEST
愛媛県宇和島市寿町2-5-1コトブキビル101
営業時間 9時~21時(ドロップイン利用者様)/ 6時~23時(会員様)
定休日 不定休/電話番号  0895-28-6335
ホームページ

 

いかだ屋で宇和海を食べ尽くす

一仕事終えた中川さんは、昼食に向かいます。市街地から車で25分。大漁旗に囲まれた異彩を放つお店が現れました。

 

 

 

近づくと男性が網で真っ白な何かを焼いています。鯛の塩釜焼きです!

男性:「内臓を取らずに焼くから旨味が回るんよ」

 

この方こそ、ここ「いかだ屋」の店主・芝磯美さんです。

 

 

 

お店の中は畳の座敷の素敵な空間。真下は海で、こちらも真珠養殖の作業小屋を改装したとか。

芝磯美さん:「さざえの壺焼きとヒオウギ貝ね。アコヤ貝の酢の物と、後で貝柱もあるよ」

 

席に着くと、先ほどの鯛の塩釜焼きの他、あれよあれよと出てくる宇和海料理のオンパレード。特にアコヤ貝は言わずと知れた真珠養殖に使う貝。芝さん家族が当たり前のように美味しく食べていたこの味を活用しようというのが、お店で提供しはじめたきっかけでした。旅の最後まで南予を満喫し、帰路につきます。

 

いかだ屋
1日限定1組(5名以上)
愛媛県宇和島市下波4737/電話 0895-29-0831

 

南予・釣りワーケーションの可能性は

最後に中川さんに今回のワーケーションの感想を聞きました。

 

中川:「宇和島には、釣りにしても、仕事をする環境にしても、そのハードは十分揃っているなという印象です。あとはそれをどう組み合わせるか。ワーケーションの受け入れを検討しているという話を聞く時、ハード面の話ばかりになってしまうケースが多いですね。釣る場所や宿へのアクセスだとか、仕事をする場所とか。もちろんハードも重要なのですが、同じく重要なのはソフトの部分、ワーケーションで来た人が地域で何を得られるかをしっかり考えるべきだと思います。
そしてどんな方に来てほしいかを決めることも大切です。釣りとワーケーションを掛け合わせるにしても、その相手が釣りの初心者なのか、中・上級者なのか、明確にした上で、それぞれにあった工夫が必要だと思います。例えば初心者向けであればレンタルボートよりも釣具レンタルが必要ですよね。それから、飲食店さんや宿屋さんに釣った魚を調理するサービスをつくっていただきたい。自分で釣った魚の調理をプロにお願いしたいというニーズは確実にあるので、きちんと対価を取って、持続できる形を築いてほしいです。釣った後美味しく食べられる、というのも釣りをするモチベーションですから。
例えばワーケーション中の1日として、朝マズメ(日の出前後の1時間ごろ。魚の活性が上がって、餌を求める時間帯)に魚を釣って、お店にその調理をお任せする。そのご馳走をご褒美に夜までしっかり仕事する、というプランは『あり』だと思います。
今回出会った南予の皆さんは親切で、私のような他所から来た人間を受け入れる力がすごいと感じました。『人』はとても大事で、この強みから逆算して特色を出すのも良いかもしれないですね。」

 

一泊二日と短い日程ながら、中川さんは多くの気づきとヒントを私たちに与えてくれました。中川さん、ありがとうございました!

 

取材・文/皆尾裕

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