川崎憲次郎さんと愛媛
――川崎さんが愛媛に最後に来られたのはいつですか?
川崎憲次郎(以下、川崎):愛媛には年に一回は仕事がらみで行っています。今年の4月には坊っちゃんスタジアムでプロ野球中継の解説をしました。ヤクルト対広島戦です。一泊して、翌日船で地元の大分まで渡りました。
――その際の食事で印象的なものはありますか?
川崎:お昼に二種類の鯛めしを食べましたね。炊き込みご飯になっているのものと、鯛の切り身を乗せる宇和島鯛めしと。僕の好みは炊き込みご飯の方ですね。
――現役選手だった頃も含め、愛媛にはどんな印象がありますか?
川崎:現役時代にも一度は愛媛に行ったはずです。愛媛と大分って近いですよね。海で繋がってますし。食べ物も似ていて、先の宇和島鯛めしは大分の「りゅうきゅう丼」のようです。刺身を漬け汁につけて食べる郷土料理なんです。そう言えば大分・別府温泉を有名にしたのは愛媛出身の人ですね。油屋熊八さん。別府の駅前には銅像が建っていますよ。言ってみれば大分と愛媛は海を挟んで隣ですから、すごく親近感があります。
――大分への地元意識は現役時代も強かったのですか?
川崎:もちろんありました。ただ意識が強くなったのはプロ野球選手を辞めて数年してからですね。どこの地方もそうかも知れませんが、子供の頃は巨人戦しかテレビ中継がなくて。なのでそこで活躍するとたくさんの方に応援してもらえるんだ、というのは一つ励みでもありました。
――愛媛の魅力はどんなところでしょう?
川崎:愛媛みかんでは真穴みかんが好きですね。みかんの木のオーナー制度なんかもありますよね、あれはいいですね。先日初めて松山から八幡浜まで、高速道路を使わず海岸線の道を使って向かったんです。雰囲気は地元の大分にも似ていましたが、オーシャンビューで気持ちよかったですね。サイクリングコースとしても最高の道。隣に線路も走ってて、田舎の無人駅も風情があって。
――大分にも海岸線がありますね。
川崎:僕の地元の佐伯市も海岸線はとても綺麗なんですよ。全てリアス海岸で。例えば都会の海岸線、茅ヶ崎とかのイメージとは違いますよね。まっすぐな道がとにかく無いので。
真玉(またま)海岸というのが北の方にあるんですよ、北九州市にも近い豊後高田市に。そこは昭和の町の雰囲気を再現したところがあって、観光名所になっています。そこの海岸線沿いが、日本一夕日が綺麗な海岸で売り出していて、夕日が水平線に沈むんだと思うんですね。実は見たことはないんですけど(笑)そこだと愛媛のもう目と鼻の先なので、愛媛からも同じような景色が見えるような気がします。佐田岬あたりですかね。
川崎憲次郎さん流オールスターゲームの楽しみ方!
――この度愛媛でオールスターゲームが開催されます。川崎さんはオールスターゲームには何度出場されたのですか?
川崎:4回ですね。
――オールスターゲームでの選手としての楽しみ方はどういったものでしょう?
川崎:当時は交流戦もなかったし、他のチームの選手とも交わることがまずありませんでしたが、オールスターでは同じロッカールームに入って、いろいろ喋りますよね。そういう楽しみはありましたね。昔は他チームの選手と話すことは、もうほぼ禁止されていました。唯一その場所が心を許せて話せる、みたいな感じでしょうね。
――プレイ中はいかがですか?例えば投手として、オールスターゲームで他チームのキャッチャーに投げることについては。
川崎:基本的には自分のチームのキャッチャーに投げさせてもらいました。でないと(投手としての情報の)ネタバラシになっちゃうんです。できるだけそういう情報は、基本的にはやっぱり隠したい。昔は今よりも情報を隠していて、他に知られたくない時代だったと思います。今はフルオープンな感じがしますね、先発投手の予告にしても。
――テレビでの野球中継も全ての球筋を分析していたり。それをしないとファンが離れていくのかも知れませんね。コロナの影響で高校球児もすごく減ったと聞きました。
川崎:少子化もありますよね。少子化の中で多くのスポーツに子供たちが分散すると、野球人口も少なくなりますよね。サッカーも世界を目指せるスポーツですし、昔みたいに野球だけがプロを選ぶ選択肢だとしたら、野球人口もそんなには減らないかもしれません。今は、eスポーツもありますし、子供がゲームで何億って稼ぐようになったら、親も「ゲームやめなさい」って言えないですよね。野球をする子供が本当に減って、将来のプロ野球選手プレーの質が落ちるのが怖いです。
――愛媛でのオールスターゲームという事で、愛媛の楽しみ方をお聞きしたいです。川崎さんは愛媛で釣りはされたことはありますか?
川崎:近くの海域ではあります。大分沖とか高知沖とか。なので似たような魚が釣れるんですよ。愛媛は鯛やブリの養殖が盛んですよね。特に宇和島とかも。あの辺のブリを食べましたが美味しかったですよ。僕はブリは天然より絶対に養殖のほうが美味しい。脂が均等に乗っていて。富山県の氷見のブリなんかはまた別物だと思いますが。とにかく愛媛と大分は似ているなと思います。
――愛媛から大分には船で向かうことができますね。
川崎:ちょうど良い船での観光旅行になりますよね。のんびりして2時間半ぐらいで。別府温泉と道後温泉でその「入り比べ」というのもできるし。ブリや鯛の食べ比べなども。何かのキャンペーンでそれぞれの違いを挑発するような形になれば「じゃあこっち来いよ」と言いやすいんじゃないですかね(笑)「お前のとこより美味しいブリ食わせてやるからこっちに来い」って(笑)でももちろんお互いちゃんと裏では事前に打ち合わせをして。
そう言えば・・愛媛に一言物申す!
――愛媛は野球拳の発祥でもあるんですよ。
川崎:そうなんですか、高校野球のイメージも強いし、野球の歴史もありますが、ただ女子野球については、大分から愛媛に一言言いたいです。どうも愛媛は女子野球発祥の地とも言われがあるようなのですが、調べると、大分の佐伯市が発祥の地だったという説もあるんですよ。これも表向きにケンカしたいですよ(笑)明治時代の当時の記事が残っていて、羽織袴でタスキ巻いて。愛媛で女子野球が行われた7、8年前。確か1910年だったと思うのですが、唯一、一番最初に記載された女子野球の記事ということになっています。僕はちゃんと記事を持っていますよ。これをネタに互いに連携して、例えば女子野球チーム同士で交流して、お互い行き来しましょう、などとできればいいですね。
川崎憲次郎さんにとっての「まじめ」とは!?
――それでは最後に。川崎さんにとっての「まじめ」とは?
川崎:意志がぶれないこと、それと人間性。ちゃんと約束を守るとか、自分のルールを守るとか。礼儀の部分も。恩や感謝、人として大事な部分をしっかりするというところですかね。 中には表向きはふざけてるけど、実はすごくまじめな人がいますよね。そんな人は人間の本質がずれてない。「まじめ」はそういうところなんじゃないかなと思いますよ。
――かつて所属されていた当時のヤクルトには、名将・野村監督や古田敦也選手もいらっしゃいましたが「まじめ」な選手はいましたか。
川崎:愛媛出身ということもあってか、山部太選手(八幡浜市出身)はまじめでしたね。今はヤクルトのフロントで活躍しています。さすが「まじめえひめ」ですね!
――ありがとうございました!
川崎憲次郎
大分県佐伯市出身。1971年1月8日生まれ。元プロ野球選手。
1989年にヤクルトスワローズに入団。主力投手として、通算234試合に登板し88勝を挙げる。その活躍を買われ、2001年に中日ドラゴンズに移籍。
引退後は、野球解説者や指導者として活躍中。