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フードプランナー・
桑折敦子さんと考える、
愛媛の“食” 前編

今回、スープストックトーキョーの商品開発などを行っている桑折敦子さんが愛媛を訪れ、産直市場での買い物や愛媛の柑橘の食べ比べを体験しました。

 

 

桑折敦子さんプロフィール
1994年短大の食物栄養科を卒業後、食品工場の栄養士などを経て、飲食店の立ち上げやメニュー開発に携わる。2004年よりスープストックトーキョーの商品開発を担当。スープの開発及び、機内食の開発に携わる。2017年より独立し、食品メーカーの商品開発やレストランの商品開発、グルメツアーや料理教室なども開催。2020年より、地域に根ざした新たな学びとその実践を進めるプロジェクト「熱中小学校」の講師として活動中。

 

産直市場で地元食材をお買い物

 

地元の産直市場などで地元の野菜や果物などを購入するのが好きな桑折さん。地元の方が作る海外の品種の野菜やくだものを見かけるとよく買ってしまうそう。

さっそく、松山市の産直市場「太陽市(おひさまいち)」でお買い物。愛媛の産直市ならではの陳列を楽しそうに見ています。

 

 

桑折:かつお菜だ。九州の方でよく食べるみたいですね。博多の人たちはお雑煮にも入れるとか。子持ち高菜もありますね!本当は白菜なんかは、買って干したり、漬けて持って帰りたいですよ。キウイも安いんですね

 

実は愛媛県はキウイの生産量日本一なんです。

桑折:いい感じに熟してて良いですね。ソースにしようかな。菊芋もありますね。これは見たら買いますよ(笑)スーパーにはあまり並んでないんですよ。意外と日持ちするし、体にもいいので。昨日はスペインオムレツに入れました。春巻きにも合います

 

今日のテーマのひとつ、柑橘。その中でも「はるか」を手にした桑折さん。

桑折:はるか・・初めて見ました。どういうのが美味しいのか見分けられますか?

スタッフ:軸が小さいのがいいそうです

桑折:スイカと逆なんですね。「せとか」は買ったことあります。そうそう文旦をサラダに入れると美味しいですよ。タイとかベトナムとかでは、似た品種をそうやって食べますね。キウイもサラダやドレッシングにすると酸味もあるし甘みもあるので便利です。「甘平」は食べたことないですね

 

福島県出身の桑折さん。地元ではなかなか見られない柑橘の種類の多さに驚いています。

桑折:東北には柑橘がそろうお店がなかなか無いですよ。そもそも昔は伊予柑とはっさくくらいしか無かったです。あ、サザンイエロー・・これは他より値段が少ししますね。じゃあ美味しいのかな?買っちゃいます(笑)。カブス・・赤いカボス?はじめて見た!・・買いましょう(笑)

 

「だいだい」の古い呼び名でもある「カブス」も、わからないからという理由で買い物カゴに。生まれつきと話す、食への興味が尽きない桑折さんでした。

 

梶谷農園で柑橘食べ比べ

 

桑折さんが次に向かったのは八幡浜市にある梶谷農園。こちらで栽培している柑橘を食べ比べします。まずは園主・梶谷さんに農地を案内してもらいます。

 

 

梶谷:こちらが「甘平」です。最近需要が伸びているものの、生産量は少ないです。生理落果(栽培過程で果実が自然に落ちてしまうこと)があって作りにくい品種なんです

 

甘平の流通が少ない理由は、栽培が難しいからなのですね。

 

梶谷:続いて「不知火」。熊本の方での呼び名はデコポンですね。次にキンカン、こちらはベルガモット。アールグレイティーの香り付けに使われます

桑折:ちなみに「コブミカン」は作っていますか?

梶谷:作っていますよ。最近葉っぱの需要もあって、ちょっと増えてます

桑折:他の柑橘で葉っぱを使うのはありますか?レモンの葉はイタリアでよく使うんですよ

梶谷:葉っぱの香りが強いのは、ベルガモット、レモン、柚子ですね。柚子は香りもいいし、春先の新芽が可愛くてピンク色なんですよ

 

他には柑橘の大トロと呼ばれる「せとか」、弓削瓢柑(ゆげひょうかん)、甘夏、晩白柚(ばんぺいゆ)、姫レモン、ひめのつき、ブラッドオレンジのモロ種、タロッコ種、ポンカン、伊予柑、河内晩柑、璃の香(りのか、フィンガーライム、レモンのユーレカ種、仏手柑(ぶっしゅかん)、スウィーティー、はっさく、清見、愛媛果試第28号こと紅まどんな・・合わせてなんと26種の柑橘を紹介していただきました。こちらを食べ比べていきます!

 

 

梶谷:気になるものはありますか?

桑折:全部です!(笑)

 

まずは取材スタッフの間で一番人気の甘平から。初体験の桑折さん、そのお味は・・

桑折:粒の立ち方がすごい!口の中ではじける感じがいいですね。紅まどんなとは違う食感の高級品種です

 

 

梶谷:男性の人気は紅まどんなよりあるんですよ。続いて私の一番のおすすめ。まだ世に出ていないこちらを・・

桑折:これは外の皮まで薄い!ジューシーですね。甘いシロップに浸かってるみたい

梶谷:ただ皮が剥きづらくて、種があるのですが

桑折:種があっても全然いいですよ!

 

それだけ美味しければ、世に出る日も近い!?楽しみです。

梶谷:次は変り種に行きましょう。みなさんめったに食べることはない、スウィーティーです。中を吸ってください

 

 

梶谷:ブラッドオレンジもどうぞ。収穫時期が早いので赤みは少ないですが

桑折:美味しいですね。今後中東料理屋さんとかにいいと思います

梶谷:実は今年、ブラッドオレンジの需要がかなりありまして、供給が足りなくなるかなと感じています。次はひめのつき。見た目はどうですか?

桑折:ぱっと見そんなに甘くない感じ。でもさっきも騙されました(笑)さっぱりしていいですね!あと香りが違います

梶谷:ベルガモットの香りもせっかくなので

桑折:・・すごいです!!

 

 

梶谷:パンチあるでしょう?お菓子メーカーさんからこれを欲しいと注文いただくのですが、パンチが強すぎて、果汁を1%以上入れられないそうです

 

次から次に柑橘を食べていく桑折さん。

梶谷:次は弓削瓢柑。縦に切ります。はい、どうぞ

桑折:おいしい。好きな味です。ちょっと口にピリっと残る感じが、グレープフルーツに似てるというか

梶谷:和製グレープフルーツとも言われる河内晩柑も人気なのですが、生理落果といって自然に落ちやすいんです。その代わりに何かないだろうかと、この品種が注目されています

 

 

そして満を持して登場は、愛媛果試第28号(紅まどんな)!シーズンは少し過ぎていますが、せっかくなので倉庫に残っていたものをいただきます。

 

桑折:この皮の薄さたるや。初めて食べた時びっくりしました。一度果汁を絞って、もう1回ゼリーで固めたのかなと思ったほどです

梶谷:今度は清見と、せとかです

 

断面をまじまじと見る桑折さん。

桑折:こうやって見ると、粒々の感じが全く違いますね

梶谷:でしょう?

桑折:せとかのぎっしり感。これも本当にゼリーみたい。せとかくらい酸味があるのが美味しい

 

 

梶谷:ちなみに一般にレモンの方がみかんより糖度が高いんですよ

桑折:酸度とのバランスの違いってことか。せとかってすごいなと思います。酸度もちゃんとあって。それにこんなに薄皮を感じる柑橘もなかなかないですよね。ところでマーマレードにしたらおいしいのはどれですか?

梶谷:皮の香りが強いものですかね。甘夏、伊予柑、極早生みかんとか

 

二人の話題は加工品に。梶谷さんは、愛媛県産のかんきつのみを使用した、果汁100%ストレートジュースを対象に開催された「えひめ愛顔セレクション みかんジュースコンクール2022」で中晩柑類100%部門のGOLDAWARDを受賞しました。

 

梶谷:受賞したのはさきほどの清見のジュースです

桑折:柑橘系の果汁は絞って加熱するのですか?

梶谷:搾汁して、冷凍保存するときは絞ってそのままガロン缶で保存です。瓶詰めでは、熱殺菌ですね。愛媛県には5、6ヶ所ほど搾汁工場があるのですが、そこで絞って賞味期限が一年間のジュースになります。農家が特色を出してミックスしたりした、オリジナルのジュースが作れるんです。ちなみに搾汁は、愛媛県ではやり方が三つあって、圧搾とすりつぶすのと、吸い取る方法ですね。絞れる割合、搾汁率は品種に寄って異なります

桑折:吸い取ると苦味があまり出ない?

梶谷:そうですね

桑折:絞り方の違いは知りたい情報でした。柑橘ジュースはどうしても皮の部分の渋みが気になるものもありますから。柑橘系の果汁は絞って加熱するのですか?

梶谷:搾汁して、冷凍保存するときは絞ってそのままガロン缶で保存です。瓶詰めでは、熱殺菌ですね。愛媛県には5、6ヶ所ほど搾汁工場があるのですが、そこで絞って賞味期限が一年間のジュースになります。農家が特色を出してミックスしたりした、オリジナルのジュースが作れるんです。ちなみに搾汁は、愛媛県ではやり方が三つあって、圧搾とすりつぶすのと、吸い取る方法ですね。絞れる割合、搾汁率は品種に寄って異なります

桑折:吸い取ると苦味があまり出ない?

梶谷:そうですね

桑折:絞り方の違いは知りたい情報でした。柑橘ジュースはどうしても皮の部分の渋みが気になるものもありますから

 

ジュースの他に、梶谷さんのはるかと不知火を使ったサワーもこのほど全国のカルディで発売開始されているとか。ジュースの他に、梶谷さんのはるかと不知火を使ったサワーもこのほど全国のカルディで発売開始されているとか。

 

 

さて食べ比べの続きです。

梶谷:ポンカンです。おすすめですよ!

桑折:ポンカン大好きです。ついつい買うというか、買いやすい。ポンカンは剥きやすいから売れる品種ですよね

梶谷:そうですね。ただ昔から比べるとポンカンの出荷量は減っていて、それでできたのが甘平なんですよ。それからこれがはっさくです。昔からのお客さんに選ばれています

桑折:はっさくはサラダにするのが美味しくて、夜な夜な剥いて、ベトナムとかタイ風のサラダにします

梶谷:和製グレープフルーツこと、河内晩柑です

桑折:切り口が綺麗ですよね。すごいジューシーでゼリーじゃないの?みたいな

梶谷:断面美です・・!こちら甘夏です。プチプチ食感がおいしいですよ

桑折:タイとかベトナムで、剥いて売ってあるザボンのような柑橘を思い出しました。そのままバリバリ食べれるように売っていて。ところで柑橘類はどのぐらい保管するのですか?熟成させますか?

梶谷:ケースバイケースですね。採ってすぐに出す、新鮮な方が良いものが伊予柑とか甘夏、はっさく、不知火もそうですね。少し酸度が高いものや、果皮が硬いものはしっかり予措(よそ)をかけて(※)水分を減らした方が剥きやすくなりますし。甘平とか紅まどんなあたりはすぐに出さないと味がボケていくんですよ。 温州みかん10、11月に収穫する早生みかんなんかは、獲れたてが美味しいです。12月に入って収穫すものは1週間ぐらい予措をかけた方がいいですね。まろやかになるというか。本当にケースバイケースですね

(※)予措・・果実を輸送や貯蔵する際、品質や鮮度を保つためにあらかじめ行う措置

 

さて一向は梶谷さんの農地の山の上に向かいます。

 

 

梶谷:ここで標高が300mですね。1.2ヘクタールがうちの土地です。東京ドームの芝生のところぐらい(笑)宇和海を望んで真正面に九州が見えますね。ここで60品種を栽培しています

桑折:山の斜面に踏ん張りながら収穫するってことですよね。すごい!でもやっぱ水はけがやっぱりこの斜面だから良い?

梶谷:そうですね、南向きですし。水はけもいいです

桑折:ここは何か動物の被害がありますか?

梶谷:イノシシとタヌキとハクビシンですね

桑折:一番美味しい時期がわかってますもんね。ここで生まれて、育ってもう子供の頃からこの辺が遊び場なんですか?

梶谷:ここは城山といって、もともとお城があったところなんですよ。城跡。なので周りを見渡せるようなところです。ここに5年前まで45世帯がいて、みかんや柑橘の価格が少しずつ上がったせいか、農家が増えて今48世帯です。私は今36歳なんですけど、それより若い農家10人ぐらいが、この狭い空間の中にいるんです

桑折:未来は明るいですね!こうやっていろんな柑橘がを作れるようになって、価値も上がって、商売になることがわかってきたんですね

梶谷:最近はふるさと納税の返礼品の需要が伸びてます。年末年始の時期と食べ頃が合うんですよ。実は「わけあり品」をもっと販売したいのですが、価値がお客様にうまく伝わらないんですよね

桑折:ぶっちゃけると「わけあり」と思ってるのは意外と農家さんだけで、買う方はあんまりわかっていないし、気にしていないですよ

梶谷:そこらへんの期待値のコントロールが難しいですね

桑折:私はもう、不揃いでも何でもいいからミックスしてダンボールで送って欲しい。お楽しみセットにして

梶谷:(笑)柔軟に対応します!

 

 

宇和海を眺めながら、柑橘農家の未来に思いを馳せる二人でした。後半へ続く!

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