松山のソウルフード 鍋焼きうどん

鍋焼きうどん ことり

松山のソウルフード”鍋焼きうどん”の老舗店

3代目がめざすのは、老若男女の誰で入りやすいお店

ライターの眞弓莉沙子です!
日本各地、その土地ごとにソウルフードがあると思いますが、愛媛県松山市では鍋焼きうどんが昔から地元住民に親しまれています。

今回は、松山市にある鍋焼きうどんのお店「鍋焼きうどん ことり」を紹介します。
松山市の商店街「銀天街」から少し外れて路地裏を進むと、どこか懐かしい佇まいで「ことり」が出迎えてくれます。

お店に入ってすぐ、田舎のおばあちゃんの家に来たかのような感覚に陥ります。

 

一時は閉店の危機も!?三代目店主が「ことり」を継いだ理由とは

昭和24年創業の老舗「鍋焼きうどん ことり」。
お店のメニューは鍋焼きうどんといなりずしの2つのみですが、お店には「ことり」の味を求めるお客さんが多く来ます。
まずは、「ことり」とはどんなお店なのか、三代目店主の中矢有伊子さんにお話を伺います。

眞弓:「ことり」はどんなきっかけで始まったお店なんですか?

中矢さん:「ことり」は、私のひいおばあちゃんとおばあちゃんが生活をするために始めたお店なんです。おじいちゃんは別の仕事をしていたんですが、「ことり」が忙しくなってきたので、おじいちゃんがその仕事を辞めて、一緒にお店をやり始めたそうです

眞弓:開店した当初から、鍋焼きうどんといなりずしのみのメニューだったんですか?

中矢さん:多分そうだったと思います。いろいろなメニューを試してはみたと思うんですけど、あまり注文されなかったみたいなんですよ。でも最後は絞って、鍋焼きうどんといなりずしだけにしたみたいです

眞弓:中矢さんで三代目なんですよね?

中矢さん:厳密には、四代目なんですよ。でも私の母がお店を継がないということだったので、私が継いで三代目に。なので、私が継がなかったら、「ことり」はなくなっていたかもしれないですね

眞弓:ええ!そうなんですか!中矢さんがお店を継ごうと思ったのはなぜですか?

中矢さん:ちょうど、このお店がなくなるかもしれない、という話が出た時、私は東京にいたんですけど、この先どうしていこうかなと考えていた時期で。
いろいろ悩んだ結果、小さい頃から慣れ親しんだ「ことり」をなくしてはいけないと思い、愛媛へ戻ってきて、後を継いだんです

東京にいた頃は、飲食とは無縁のお仕事をされていたという中矢さん。実際にお店を継いでみるとわからないことだらけで大変なことも多かったそうです。

中矢さん:出汁は自家製なので、おばあちゃんからきちんと味を教えてもらったんですが、味の足し算、引き算ってあるじゃないですか。甘さが欲しいから砂糖を入れたらいいというわけではなかったり、醤油を入れればこの味が立つよね、とか、そういうことも全く知らずに入ったから、慣れるまでに気持ちが病みますよね(笑)

眞弓:まずは、お店の味をしっかり覚えて、表現するというところからスタートですもんね

中矢さん:昔から来てくださるお客様とかも、昔から食べているから、いいも悪いも知っていらっしゃるんですけど、代が代わると、味が変わった、と言われることが多くて。
最初は少し気にしていたんですけど、よくよく考えたら、昔から来ているお客さんって、その方も歳をとっているから、80代のおばあちゃんが作っていたものが、30代に代わったら、それはまあ変わるよねって、ちょっと開き直って、気持ちは楽になりました

 

「ことり」の鍋焼きうどんは、ほんのり甘くて優しい

それでは早速、「ことり」の鍋焼きうどんといなりずしを食べてみます!!
松山の鍋焼きうどんは、アルミ鍋で出されるのが特徴の一つ。注文が入ると、アルミ鍋がガス台に並びます。

「ことり」の鍋焼きうどんの麺は、2022年12月から製法が少し変わり、少しコシがありつつも味が染み込みやすい麺になったそう。出汁も、いりこと昆布、また「ことり」の鍋焼きうどん専用に作った醤油を使っており、職人さんがこだわった素材がつまったうどんになっているとのこと。

そんな鍋焼きうどんが完成したので、早速食べてみます!!

まずは出汁から!透き通った色がとてもきれいです。

松山の鍋焼きうどんは、甘い出汁のお店が多いのですが、「ことり」は甘さ控えめ。このほんのりやさしい甘さにほっこりします。

眞弓:出汁がほんのり甘くておいしいです!!

中矢さん:実は、出汁にそんなに甘さをつけているわけではないんです。具を甘くしているだけなので、ネギのところの出汁を飲むと普通だけど、揚げとお肉の間のところを飲むと甘い。ちょうど混ざった時に甘みのバランスがちょうど良くなるようにしているんです

眞弓:そうなんですか!出汁自体に甘さをつけているんだと思いました

中矢さん:出汁自体には、代々続く「ことり」の秘伝の甘いタレを入れているんですが、それも入っているか入っていないか、くらいなので、ほぼ具の甘みとお醤油の自然な甘みでできています

出汁自体に甘さをつけていないとは驚きです。それぞれの具材の甘さのバランスが絶妙だからこそ、このやさしい甘さが出てくるんでしょうか。
麺もコシがあるということでしたが、それでも柔らかい!煮込んだ分、味も染み込んでいてとってもおいしいです!

続いては、いなりずし!一つがとっても大きい!創業から作り方は変わらず、74年続くいなりずしです。中にはにんじんとごぼうが入っています。

眞弓:このいなりずしもやさしいお味ですね

中矢さん:いなりずしを食べてから、鍋焼きうどんの出汁を飲むとちょうどいいようになっていますね

眞弓:確かに、すごく出汁にあいます!

鍋焼きうどんといなりずしの最強タッグを食してお腹いっぱい!・・・なところに、中矢さんから、聞き捨てならない一言が。

中矢さん:メニューには出していないんですが、実は、鍋焼きうどんに追加で生たまごをトッピングすることができるんですよ

眞弓:え!裏メニューですか!

中矢さん:はい、生たまごをトッピングすると、さらに甘みが増して、味がまろやかになるんですよ。
なので、お客様の中には、鍋焼きうどんを2杯頼んで、1杯には生たまごを追加される方もいらっしゃいますよ

眞弓:じゃあ、もう少し甘くてもいいかも、と思う方にはいいですね!

これはいい情報を聞きました!次回は、生たまごもチャレンジしてみたいと思います!

 

これだけは先代に負けていない!中矢さんのこだわりは明るく元気な雰囲気づくり

眞弓:「ことり」を営業している中で中矢さんが大事にしていることって何ですか?

中矢さん:昔から続いているので、私に代替わりしたから、来にくくなったよねっていうのが嫌ですね。先代たちがお店をしていた時よりは、雰囲気がいいはずなんですよ。これは先代たちには申し訳ないんですが、自負しているんです(笑)
1人で来られる方や、お子様連れ、お年寄り、いろんな方がいらっしゃるんですけど、食べに来た時に、明るく元気な感じで、小さいお子さんにとっては、おばあちゃんの家に来たような、県外の方にとっては、「帰ってきたな」と思ってもらえるような、そんなお店にできるようこだわっていますね

お店に入った時の、あの田舎のおばあちゃんの家に来たような感覚は、中矢さんがこだわりの接客から生み出された雰囲気によるものだったんですね。

眞弓:今後、「ことり」はどのようなお店になっていきたいですか?

中矢さん:コロナ禍ですごく考えさせられた部分もあって、うどんの発送を始めたりしているんですが、古き良き部分は残しつつ、時代に合った感じで何かできていければと思っています。ただ、このお店があってこそできるんだということを忘れずに、新しいことにチャレンジして、いろんな方に松山の鍋焼きうどんを知ってもらえたらなと思います

眞弓:このうどんの味を多くの人に知ってもらうためにも、ぜひこの先何十年と続くお店でいてほしいです!

 

中矢さんにとって“まじめ”とは

最後に、中矢さんにとって“まじめ”とは何か、お聞きしました。

中矢さん:先代から受け継いで、譲れない出汁の味だったりとか、お店のいいところを残したり伸ばしたりして、前に進んでいくことかな、と思います

歴史を守りつつ時代の波に乗り続ける「鍋焼きうどん ことり」。74年間続く鍋焼きうどんをぜひ一度、ご賞味いただきたいです!
明るく元気な店主・中矢さんにもぜひ会いに行ってみてくださいね。

 

 

鍋焼きうどん ことり

愛媛県松山市湊町3-7-2

TEL:089-921-3003

営業時間:10時〜14時(なくなり次第終了)

定休日:水曜日(不定休あり)

※詳しくは、Instagramでご確認ください

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