名水・うちぬきで作る絶品お蕎麦

西条そば甲

ご当地蕎麦を目指し、

毎日まじめに地域と蕎麦に向き合う蕎麦屋

こんにちは!まじめしライターの岩畑です。
梅雨も明けて夏本番!うだるような暑さが続いていますが、みなさま夏バテなどしていないでしょうか?
さて、今回は!暑い夏にツルッと食べたくなる蕎麦を求めて、愛媛県西条市にある「西条そば甲(きのえ)」にやってきました。

西条市といえば、西日本最高峰の石鎚山を水源とする加茂川の伏流水が自噴する湧水「うちぬき」が有名。「日本名水百選」に認定されており、その美味しさは全国利き水大会で「日本一の美味しい水」としても選ばれたことがあるほど!
そんな、名水・うちぬきと国産の玄蕎麦から作られる蕎麦に期待を膨らませ、いざ入店!

石鎚山が描かれた暖簾を潜ると…

カウンター席の美しい仕切りが迎えてくれます。
実はこのアーチも石鎚山をイメージしているのだそう。石鎚山やうちぬきへの愛情が感じられます。

さて、蕎麦は鮮度が命!ということで、出来立てツヤツヤの蕎麦をいただきます!

名水・うちぬきで作る絶品お蕎麦!

まずは蕎麦粉八割・つなぎ粉二割の「ざるそば」から。

ご覧ください!このツルんとした輝きを!
もう待てません!いただきます!!!

つゆをちょいちょい〜とつけて…!

ずずずっと一気に啜る!!ん〜!しなやかで滑らかな蕎麦!
「蕎麦は喉越しを楽しむものだ」と聞いたことがありましたが、まさにその言葉通り。ほどよい弾力の蕎麦がつるりと喉をすべり落ちる…。蕎麦を食べる上でこれ以上の幸せがあるのか?と思うほどの喉越しに感動です!
ほんのり甘口のつゆも蕎麦と絶妙なバランス。

こだわりは蕎麦のみならず、つゆにも感じられます。
つゆの命とも言える「かえし」は、愛媛県大洲市の梶田商店の醤油や、地元・西条、小豆島の醤油を使っているそう。そこに国産にこだわった鰹節の出汁を合わせることで、愛媛らしい甘口でまろやかな蕎麦つゆとなるそうです。
開店当初は弟子入りしていた店のつゆをそのまま使用していたそうですが、地元・西条や愛媛の人の口に馴染むつゆにしたいと考え、今の甘口のつゆになったのだと教えていただきました。

さてお次は、「絹かわなすの冷やかけおろし」を。

「絹かわなす」は、西条市内の限られた地域で継承されてきた伝統野菜。
長さ20cm、重さ350gという大きなナスを使った西条そば甲オリジナルの夏季限定のメニューです。

大迫力の絹かわなすにかぶりつき、すかさず蕎麦を啜る!!

キリッと冷たい出汁に浸かった揚げびたした絹かわなすを口にした瞬間、衝撃が!
フワッ、ジュワッ、トロッ、今まで出会ったことのないナスの食感、そしてこれでもかと染み込んだ出汁!そこにすかさず啜る蕎麦!
とても繊細、それでいてこのインパクト!本当に驚きました。美味しすぎてどんどん箸が進みます。
ビッグサイズの揚げびたしのナスがトッピングされているにも関わらず、最後までさっぱりと食べられる…これは、名水・うちぬきの力なのでしょうか!

絹かわなすの蕎麦の他に、西条産のトマトを使った、自家製トマトソースと蕎麦つゆが融合した「ソバゲッティ」なるメニューも!次回はこちらも食べてみたい…

「西条市で、蕎麦屋がしたい」

本格的な蕎麦からオリジナル蕎麦まで、バラエティーに富んだラインナップが西条そば甲ならでは。蕎麦へのこだわりなど、店主の荻原甲慎さんに聞いてみましょう。

岩畑:早速ですが、「西条そば甲」を始めるきっかけを教えてください

荻原さん:今から20年ほど前、奥さんの実家がある旧丹原町に里帰りしとったん。丹原から新居浜市に遊びに行く道中で西条市を通過するんやけど、その時「ようこそ、水の都西条に」という看板と出会ったんよね。
それまで、西条市の水が有名だということを知らんかったんやけど、聞くと至る所にうちぬきがあって、実際に「東禎瑞のうちぬき」で湧水を飲んだ時はびっくりしたね。僕は大阪の箕面っていう山育ちなんだけど、その山の水とも違う!甘くて美味しくて…これは出会うべくして出会ったんだと思ったね。
その時、「西条市で、蕎麦屋がしたい」。そう思ったんよ

岩畑:すごい!一つの看板がきっかけで…。でもなぜ「美味しい水=蕎麦」という考えになったのでしょうか?

荻原さん:大阪はうどん文化だけど、僕は蕎麦が好き(笑)。当時働いていた会社では日本各地に出張していて、全国の蕎麦を食べ歩くうちに、自分で蕎麦を作ってみたいという気持ちが湧いてきてね。流通が発達し始めた時代だったから、蕎麦粉はどうにかなると思ったんやけど、美味しい水はどこでも手に入るものじゃない。それなら西条市で蕎麦を作ればいいじゃん!って閃いたん

荻原さんの人生の一部分しか聞いていないのに、まるで映画のエピソードのようで、聞いている私までワクワクしてきました。一大決心をした荻原さんはその後、家族を連れて山梨の有名蕎麦店で修行。その1年後、ここ西条市で西条そば甲をオープンするに至ったそうです。

ところで蕎麦を食べていて気になったのは、本格的な蕎麦を食べられる一方で、創作料理とも言えるようなオリジナル蕎麦も食べられるという点。蕎麦屋と言えば、「こだわりの蕎麦のみ!以上!」。そんなイメージを勝手に持っていた私にとっては衝撃的。メニューについてのこだわりを聞いてみましょう。

蕎麦を西条市の名物に!

岩畑:二八そばや粗挽き、十割などの王道の蕎麦もありながら、イタリアンと蕎麦を掛け合わせたオリジナルメニューもありますね。メニュー作りのこだわりはありますか?

荻原さん:本当の蕎麦屋ってなんだ?って考えると、蕎麦専門店として二八や十割のような元来のメニューも提供しないといけない。
一方で西条市は、松山市から香川県に行くときの通りすがりの町。兵庫県豊岡市に出石町ってあるんやけど、この町は大阪から兵庫県の城崎温泉に行く途中にあって、昔は通りすがりの町やったん。でも、出石町の地元グルメ「出石さらそば」を発信することで、立ち寄ってもらえる町になった。「その町ならではのモノ」を売って商売をするということを西条市でも出来たらいいなと思うんだよね。
だからこの店では、西条市の特産の絹かわなすやトマト、海苔を使ったオリジナルメニューを提供してる。東から西、西から東に移動する人たちにも、地元のいいものを食べてもらって、もっともっと全国の人に知ってもらう方法を試していきたいなと思うんよね

岩畑:「西条市で美味しいものを食べて行ってよ!」アピールすることで、今まで通り過ぎるだけだった人が立ち寄る場所になるかもしれないですね!

荻原さん:そうそう。西条市以外の人がこの町に来ることによって、西条市のモノが売れるというサイクルができるからね。
あとは時代の変化でナショナルブランドが愛媛にも増えてきた。チェーン店では全国どこでも同じ味を楽しめるよね。ということは、僕たちスペシャリストの味はその土地に行かないと食べることができない時代になったということ。だからこそ、僕は地元の食材を使って僕にしか作れないものを提供することが大切になるんよね。
麺類って、名前の頭にご当地名がつくんよ。例えば、讃岐うどん、八幡浜ちゃんぽん。徳島ラーメン、そして江戸前そばとかね。「地名+麺」。それって、日本人が好きな麺類はいろんな土地で親しまれているもの。僕も「西条市のご当地になりたい」という思いを込めて店名を「西条そば甲」にしたんよ!

この考えにたどり着くまでに、荻原さんはたくさんの試練や困難を乗り越えてきたそうです。誰のために蕎麦を作るのか、何のために蕎麦屋を開いたのか。開店当初、自身に向いていたベクトルをお客さんや西条の町に向けることで、お客さんが増え始めたそう。
店名に込められた想いからも、西条市や蕎麦への愛が伝わってきます。

個じゃなく、横と横の繋がりを大切にしたい

岩畑:今年19年目を迎えた西条そば甲ですが、来年の20年目、そして30年目と、これからどのようにしていきたいと考えていますか?

荻原さん:僕はね、人生の最終目標に「叙勲」をもらうって掲げてるん(笑)。そのためには、蕎麦という文化をいかにたくさんの人たちに伝えていくかが大切になるんよね。手打ちで美味しい蕎麦を作り続けることはもちろんやけど、愛媛の蕎麦屋同士の繋がりをしっかりと作り、蕎麦の文化を広げて発信していかなければいけないなと。
この店だけが盛り上がるんじゃなくて、西条市や愛媛県全体を盛り上げて行けたらいいなって、個じゃなくて横と横との繋がりを大切にしたいよね

と、笑いながらも熱心に語る荻原さんの顔から、これは心から思っている言葉なのだと感じました。四国の人たちは自分たちの良さをアピールするのが苦手。と、よく言われますが、そんなイメージを払拭するような力強い言葉。西条そばがご当地グルメとされる日が来ることを切に願います!!

岩畑:最後に荻原さんにとって「まじめ」ってなんでしょうか?

荻原さん:僕って不真面目なんだよね。髪の毛も茶色だし、しゃべっても軽いでしょ?だけど仕事はちゃんとしているという、不真面目とまじめ、裏と表があるんよね。朝4時から蕎麦を打って、店を開けて。閉店後も製粉するルーティーンをこなすって、美味しいものを作りたいという、まじめさがないとできないことやんか。そのバランスが大切よね。
まじめで実直を100%体現して、「てやんでい!」って言ってるような昔の蕎麦屋でもいい。でもお客さまからしたら、蕎麦はうまくても店主は気難しいそうだよね〜という印象になるから、僕はそうならないようにお客さまに対して砕けた対応をするようにしてる。昔ながらの蕎麦屋の店主に比べると僕は不真面目に見えるかもしれないけれど、そういう一面があるからこそ、まじめな部分がより際立つんじゃないかなって。
昔からの良い面と、今の時代に合わせた面も持たないとね。「大事なのは“変わってくこと”“変わらずにいること”」。まあこれは槇原敬之さんの歌なんやけどね(笑)。

最後に素晴らしいオチまでつけていただきました(笑)!
お話を聞いていて、西条そば甲で提供されるメニューは荻原さんの人生そのものなんだと感じました。ぜひこの熱量をお店で味わってください!

西条そば甲

住所:愛媛県西条市朔日市783-6

電話:0897-55-7836

営業時間:11:00〜14:00 ※売り切れ次第、閉店

定休日:日曜日

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