地域に根ざしたラーメンの名店

豚珍行

メニューに込められた50年の誠実な努力を実食レポート!

こんにちは、まじめしライターの野本鈴夏です。
突然ですが、みなさんはお酒を飲んだあとの“シメ”、何を食べたくなりますか?
雑炊?うどん?アイスクリーム?それともラーメン?私は断然ラーメン派! 正直、お酒よりもその後のラーメンを楽しみにしているくらいなんです…。

そんな私が今回ご紹介するのは、シメにうってつけの麺があるお店。その名も「豚珍行(とんちんこう)」。松山市の飲み屋街「二番町」にあり、なんと月曜から土曜日は深夜3時まで営業しているんです!
遅くまで開いていることもあって、飲み会終わりのお客さんのほか、コンサート終わりのアーティストや、芸能人もふらっと立ち寄ることもあるんだとか。
もちろん、ランチや0次会にもピッタリ。幅広いシーンで利用されていますよ!

そんな多くの人を虜にするグルメ、いったいどんな味なのか…気になりますよね?
私も気になってきました。…というかもう我慢できないのでお店に入っちゃいましょう。赤い暖簾の向こうに、どんな「まじめし」が待っているのか──いざ入店ッ!

暖簾の向こうに待っていたのは…

店内に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、赤を基調とした活気ある空間。
入り口すぐの場所にはカウンター席が並び、奥にはゆったりとくつろげるテーブル席が広がっています。

そして壁にはびっしりと、サイン色紙がズラリ!私が好きなあのアーティストのサインも!?なんと200人以上もの著名人が訪れているらしいのです…。その1枚1枚が、この店が長年愛されてきた証。感謝の言葉も添えられ、思わず見入ってしまいます。
食事を待つあいだ、そんな“スターたちの足跡”を眺めるのも、ここでの楽しみのひとつですね!

サインに目を奪われながらも席に着いて、さっそくメニューを開いてみると…どれもこれも気になるものばかり!優柔不断な私にとっては、まさに試練の時間。

「いっそ全部ください」って言いたくなる気持ちを抑えつつ、ああでもないこうでもないと悩みに悩んで、ようやく注文完了。人気メニューや気になるものをいくつか選んでみました。

老舗中華そば屋のまじめしに迫る!

記念すべき、豚珍行でいただく最初のメニュー!それはもちろん、お店の顔ともいえる名物の中華そば!
2023年には、日本テレビ系列「ニノさん」の番組内で、お笑いコンビ・宮下草薙さんが実際にこのお店を訪れて、この中華そばを堪能したそうです。

「スープは、豚骨と鶏ガラをベースに、野菜や魚介のだしを加えてじっくり煮込んでいます。」と店主の峯尾さん。比率は豚骨が7に対して鶏ガラが3。そこに魚介の旨みが重なることによって、あっさりなのに奥深い味わいになるんだそう。

お酒を飲んだあとの締めにピッタリなこの1杯。
とはいえ、飲んでなくても食べたくなるのが正直なところ。それでは、いただいていきましょう!

まずはスープから!丼から立ちのぼる湯気とともに、しょうゆの香ばしい香りがふわっと漂います!

豚珍行の中華そばは、シンプルだからこそ、素材の輪郭がくっきりと浮かび上がります。豚骨と聞くと重たいイメージを持つかもしれませんが、こちらはあっさりとした口当たり。グツグツと煮込む濃厚系ではなく、じんわりと旨みを引き出した優しいスープです。飲んだあとにもスッと食べられて、最後まで飲み干したくなるような奥深さとキレがあります。

続いては麺!合わせる麺は、数種類の粉を独自にブレンドした自家製のストレート細麺。冷蔵庫で1日寝かせて熟成させていて、そのひと手間が麺のコシと喉ごしに表れています。つるっとした口当たりの中に、噛むたびに小麦の風味がふわっと広がります!なんとランチ営業時には、中華そばや味噌ラーメンなどの麺類は、同じ値段のまま麺の量を1.5玉や2玉に増量できるとのこと!これはお得すぎる。

お次にいただくのは、人気メニューの餃子!こちらもニノさんで紹介され、全国的な注目を集めた1品。

峯尾さん:餃子をスタジオに送って、現地のフードコーディネーターさんに調理していただいて、それを出演者の皆さんに食べていただきました。スタジオで菊池風磨さんが「美味しい!」って言ってくださって。「風磨くんが食べた餃子が食べたい!」と来店するファンの方もいて、すごく反響がありました。
アクリルスタンドと一緒に写真を撮っている人もいましたよ!

この放送をきっかけに、県外からのお客さんが一気に増えたそう。そんな話題の餃子、いったいどんな魅力があってここまで多くの人を惹きつけるのでしょうか!?

その秘密は、キャベツ8:お肉2という野菜多めのバランスにありました。あっさりとしながらも、旨みが広がる、なんとも絶妙な味わいになるんです。

焼き方にも、ちょっとした工夫があります!一般的な餃子は、フライパンで焼き色をつけてから水を加え、蒸し焼きにするのが定番。でも豚珍行では、その順序が逆。
まず、フライパンに水を張り、餃子を並べてから火にかけて沸騰させます。しっかり蒸し上げた後に水を捨て、仕上げに油を回しかけてじっくりと焼き上げます。こうすることで、皮はパリッと香ばしく、中はじゅわっとジューシーに仕上がるんです。

実はこの方法、開店当初に知識も設備もない中、「とにかくフライパンでなんとか焼こう」と試行錯誤した末に生まれたもの。偶然のようでいて、今ではお店の味を支える大切なこだわりになっています。

さらに、定番の「白餃子」に加えて、2020年の店舗改装を機に、刺激的な新メンバーが登場!
韓国唐辛子とマーラー系スパイスをブレンドした、ピリ辛の「赤餃子」と、黒ごまと山椒をベースにした、大人の「黒餃子」です。どちらもハーフで注文して、赤と黒を半分ずつ楽しむのもオススメですよ!

さあ3種類の餃子が到着しました!
メニュー名は言わずとも色で分かりますよね!?なんともインパクト抜群なビジュアルです。まずは王道の白餃子から…。

カリカリもちもちの皮の中には、キャベツたっぷりの餡。野菜の甘みがあって、ふわっと軽やか、なのに旨みはしっかり。何個でもパクパク食べられちゃうほど美味しい!

お次は赤餃子。食べた瞬間はピリッと刺激が走る!でも、辛いだけじゃない!じんわり広がるコクと香りがクセになるんです。韓国唐辛子の芳ばしさに、揚げにんにくのパンチが加わって、食欲をぐいぐい刺激してきます。

さて、最後にいただくのは黒餃子。
こちらに関してはなんにも味の想像が付かない、どんな味なんでしょう(パクリ)

なるほどこういう感じか!これも美味しい〜〜!食べた直後は「ん? 意外とマイルド?」と思いきや、後からじわじわ効いてきます。
花椒の香り高い刺激が口の中に広がって、「もう1個!」と手が伸びてしまうほどの中毒性があります。

新メニューの餃子2種は、一見変わり種に見えますが、ベースはすべてキャベツ多めの優しい味わいの餡。このバランスがあるからこそ、スパイスの個性が活きてくるんですね。

さあ、餃子で食欲はすっかり全開!最後を締めくくるのはキムチブタ炒め!
豚珍行の野菜炒めやレバニラ炒めなどの炒め物は、夜営業のみの提供です。お酒のアテにぴったりとのことですが、お酒を飲んでしまうと取材どころじゃなくなるかも。
豚珍行の魅力をしっかり皆さんにお届けするためにも、ここは我慢して、代わりに白ご飯を追加です!

運ばれてきた瞬間、キムチと豚肉、ごま油の芳ばしい香りが漂ってきて…これだけでもう、白ご飯が3口はいけそうな勢い。

ジューシーな豚肉にピリ辛キムチが絡んで、ご飯が止まりません!正直なところ、これだけを食べに豚珍行を訪れてもいいんじゃないかと思えるほどの満足感…。即席キムチ丼を作って食べるのも最高の楽しみ方かも。いや、絶対にやるべきです。

さて、お腹いっぱい豚珍行のメニューを堪能したところで、お店の歴史や大切にしていることについて、改めて店主の峯尾さんにお話を伺いました。

家族を支えるために始まった豚珍行

野本:ごちそうさまでした!早速お聞きしますが、今年でお店は創業何年になるんですか?

峯尾さん:昭和49年に創業で、昨年50周年を迎えて、今年で51年目になります!
父が1代目、僕が2代目ですね。

50周年を記念に作られたスタッフTシャツ。なんと峯尾さんの弟さんがデザイン!

野本:50年以上続けられるって、凄いことですよね・・!お父様が創業されたと伺いましたが、ご出身は愛媛県なんですか?

峯尾さん:いえ、父は静岡県、母は長崎県の出身で、もともと愛媛県には縁がなかったんです。祖父が新聞会社に勤めていて、戦後、西日本に新聞の販売店を広げる中で大阪府に移り住みました。父と母は大阪府で出会ったんですよ。父は祖父の仕事の関係で松山市に行くことがあって…その後母と一緒に大阪府から愛媛県に移り住みました。

野本:なるほど、そんな経緯があったんですね!お父様は最初から飲食店を?

峯尾さん:いえ、最初は人形屋をやっていました。郷土人形の「姫だるま」や五月人形、あとは雛人形などを扱っていました。でも、昭和48年のオイルショックの影響で倒産してしまったんですよ。管財人の方から「家族を支えるんだったら飲食店をやってみたら」とアドバイスを受けて、ここを始める決断をしたのです。

野本:かなり大きな転換ですね。今のお店の場所も、その当時から?

峯尾さん:はい。もともとは駐車場だった土地を改装して始めました。最初は父と母だけで夜遅くまで働いて、少しずつお客さんが来てくれるようになって、借金も返済していけるようになりました。そこからお店を改装しつつ、ずっとやってこれたんです。

野本:ご両親の奮闘を間近で見て育ったんですね。お店を継ごうと思ったのも、その流れからでしょうか?

峯尾さん:そうですね。高校を卒業したあと、最初は調理師学校に行こうと思っていたんですが、ちょうどその頃に店が軌道に乗り始めていて。自然と21歳のときに家業を手伝うようになりました。

野本:あの…ずっと気になっていたのですが、店名の「豚珍行」も、なかなかインパクトがありますよね。どういった意味があるんですか?

峯尾さん:最初は店名すらなかったんです。でも、知人の精肉店からホルモンなどの部位を分けてもらっていて、それをお酒のアテとして出していたんですね。珍しい豚の部位を出すから「豚珍」、そして「行」は中国語で「お店」という意味があって、銀行のように堅い商売になるようにという願いを込めて「豚珍行」と名付けました。

野本:そういう背景があったんですね!名前に込められた想いがまた素敵です。そんな豚珍行さんですが、ラーメン屋さんとしても知られていますよね。最初からラーメンが人気だったんでしょうか?

峯尾さん:いや、最初は全然でした(笑)。おでんのほうがよく出ていましたね。でも、周囲の方のアドバイスをもらいながら、素人ながらもラーメンの作り方を研究して、4〜5年経ってからようやく人気メニューになった感じです。

野本:その積み重ねが、今の味を支えているんですね。2020年に登場した「鶏足」も目玉メニューだと伺いました。あまり見かけないメニューですよね。

峯尾さん:うちの親父が「どうしてもやりたい!」と言い出して。僕は最初、大反対だったんですよ。「えー?本当にやるの?」って感じで(笑)。愛媛のラーメン屋さんは屋台から派生した文化があって。
父曰く、その屋台では七輪で焼いた鶏足を提供していたみたいなんです。僕はその頃を知らないんですけど、 親父が「それがルーツなんだからやるんだ!」って。それで、実際に始めたという経緯があります。

野本:新メニューに挑戦するだけでなく、昔ながらのスタイルも大切に受け継いでいたんですね!次に来た時は絶対食べます!

※炒め物だけじゃなく、鶏足やおでんも夜営業のみでの提供!気になる方は夜に行くべし。

ここだけの味を守り続けることを大切に

野本:では、お店をする上で大切にしていることは何ですか?

峯尾さん:餃子やラーメンは他のお店にもありますが、うちはオンリーワンの味を目指しています。だからこそ、この味をブレずに提供することが大切だと思っています。

野本:ここにしかない味にこだわり続ける姿勢、本当に素敵ですね。だからこそ、多くの人に長く愛されているんだと感じました。日々の仕込みや調理で、特にこだわっていることはありますか?

峯尾さん:工場で作っているものが1つもないんです。同じ材料で同じ時間だったとしても、その日の健康状態だったりとか、気温だったりとかで、豚肉を炊く時間も、日によって違います。麺も、夏と冬とでは加水率を変えています。こういった細かいところに気をつけて、毎日ベストな状態になるように調整しています。

野本:まさに職人の技とこだわりを感じますね!そうした日々の積み重ねが、お店の味を支えているのだと改めて実感しました。それでは最後に、お店のこれからの展望についてぜひお聞かせください。

峯尾さん:奇をてらうようなことはなく、これからも小さな変化を積み重ねながら、時代に合わせて少しずつ進んでいけたらと思っています。急激な大きな変化というのは、どうしてもいろいろな歪みを生んでしまいますから。

日々の営業を真面目に、誠実に積み重ねる

峯尾さん:実際、これまで50年続けてこられたのも、日々の営業を真面目に、誠実に積み重ねてきた結果だと思っています。「継続は力なり」ですね!続けていくこと、日々の営業に向き合うことを大事にしています。

豚珍行にとっての「まじめ」とは、日々の営業を誠実に、真面目に積み重ねること。その姿勢が、50年以上にわたりお客さんに愛され続けてきた、人の暖かさに溢れる場所を作っています。
店主の峯尾さんが語る、ここにしかない味を追求し続ける真摯な想いこそが、このお店の人気の秘密だと強く感じました!

皆さんもぜひ、豚珍行の赤い暖簾をくぐって、この味と人の暖かさを体感してみてください!

豚珍行

愛媛県松山市二番町1-10-6
電話番号:089-943-2404
営業時間:月〜土曜11:30〜14:00、18:00〜3:00(L.O.2:30)/日曜18:00〜1:00(L.O.0:45)/祝日 11:30〜14:00、18:00〜1:00(L.O.0:45)
定休日:なし

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