マルブン百年の計、大衆食堂にあり!

マルブン小松本店

1923年(大正12年)、西日本最高峰・石鎚山を望む、かつての国鉄・伊予小松駅前の地でマルブン小松本店は創業しました。来年にはめでたく創業100年を迎える、愛媛を代表するこの名店には、歴史に培われた「まじめさ」がきっとあるはずです。またマルブン小松本店のあるここ西条市では、ご当地グルメ「てっぱんナポリタン」が盛り上がりを見せています。「ナポリタン」と言えば戦後の日本に生まれ、昭和・平成・令和と世代を超えて庶民に愛されてきたメニュー。マルブンさんが長くお客様に愛される理由が鉄板に隠されているかもしれません。早速調査に参ります!

どうも、ライターのフロリダです。私は西条市在住なのですが、2020年にマルブンさんがリニューアルオープン(※)してからは初めての来店です。自ずとテンションも上がります・・駅の目の前、店舗の外観を撮影したら、早速中に入りましょう、景気良くポーズを決めて、せーのっ、まる(ぶん)!

(※2020年3月から9ヶ月にかけて築75年のお店の建替工事を行なった。同年12月リニューアルオープン)

西条鉄板ナポリタンのステッカーを確認して店内に入ると、何やら厨房で女性がフライパンを振っています。

女性:できました!

女性はおもむろにお皿に大きなオムライスを盛り付けました!・・でもお昼の営業時間は終わっているはず・・

男性:こんにちは!今日はよろしくお願いします!

とそこに、専務の眞鍋一成さんです。

フロリダ(以下、フロ):よろしくお願いします!今は・・休憩のお時間ですよね?これは・・?
眞鍋一成専務取締役(以下、眞鍋さん):スタッフのまかないです。若いスタッフにメニューで出すオムライスに挑戦してもらっていて、これは大盛りのサイズですね。(厨房に向かって)昨日より上手になってるよ!

まかない料理でもなんと美味しそうなオムライス!ふと店内を見渡すとスタッフさんも皆活気があります。お歳もお若い方が多いような・・

眞鍋さん:従業員の平均年齢は32歳ですよ

もちろん若ければ良いというわけではありませんが、地域の若者がイキイキと働いているのが伺えます。ちなみに眞鍋専務は35歳。次世代のマルブンを引っ張っていく創業一族の五代目です。

さて詳しいお話は後にして、看板メニューのひとつ「愛媛西条てっぱんナポリタン」を注文します。

厨房では今年4年目となるスタッフ、小林海斗さんが3つのコンロに火をつけます。
一つのフライパンでは野菜を炒め、そこにソースを投入。もう一つのフライパンでは、大きなソーセージがじっくり焼かれます。そして最後の一つは鉄板を温めています!

フロ:鉄板もしっかり”焼く”んですね
小林海斗さん(以下、小林さん):そうです。ソーセージは隣の鉄板でも調理ができますよ
フロ:お店がリニューアルして、調理しやすくなりましたか?
小林さん:めちゃめちゃ良くなりました!

パスタの茹で上がる1分前に、溶いた卵を熱々の鉄板に流し込みます。ジュワー! 目玉焼きが乗っていることもよくあるナポリタンですが、マルブンは鉄板で調理した卵の薄焼きの上にナポリタンが乗ります。パスタをソースに絡め、さらに先ほどのソーセージがオン!完成です。

小林さん:お客様に届く時に一番美味しくなる温度になります

パスタの茹で上がりと熱々の鉄板の見事なコンビネーションです。では早速いただきます!

フロ:うん!ハフハフ・・

鉄板から卵を丁寧に剥がしつつ、麺と一緒にいただきます。

フロ:これは!

ほのかに残る酸味で、すっきりとした味わいです。後味さっぱりでどんどん食べてしまいます。完食です!

眞鍋さん:実は調理の最後にみかんジュースを入れています
フロ:なるほど!美味しかったです!

フロ:鉄板ナポリタンはいつ頃できたメニューですか?
眞鍋さん:十数年前、現社長である四代目は地元にあるもののブランド化に目を向けていて、当時B級グルメブームもあり、西条市には鉄板ナポリタンがあるぞということで、当社もメニュー開発に取り組みました。それが原型ですね。化学調味料不使用で、素材にもこだわりつつ昔の味を再現しています。今のかたちになったのはナポリタンスタジアム(※)に出場したこともきっかけですね。2013年に四国代表として出場して、愛媛らしさやインパクトを出すための工夫として、生のフランクソーセージを乗せたり、隠し味のみかんジュースを入れました。おかげさまで全国2位となり知名度はあがりました

(※)大手ケチャップメーカーのカゴメが2013年から4年に一度開催する「日本一の”食べたい!”ナポリタン決定戦」

フロ:そういえば昨年はあの人気テレビ番組『マツコの知らない世界』でも取り上げられていましたよね!(※)『進化したナポリタン』の一つとして紹介されていました」

(※2021年5月25日放送。「及川光博さんが紹介するナポリタンの世界」にて)

眞鍋さん:担当者へのメールでこだわりを伝えたのが良かったです(笑)弊社の理念に『おいしさの追求』というものがあります。常にバージョンアップし、食材一つにしてもどんどん進化させようと思っています

マルブンさんの鉄板ナポリタンは、地元のリブランディングと「おいしさの追求」から生まれたまさに「鉄板メニュー」となりました。地域を大事にする姿勢は歴史が培ったものでしょうか。

眞鍋さん:大正12年に初代の眞鍋文吉が軽食を出す食堂として創業して、昭和初期の二代目の頃にはお土産や切符販売などもしていました。ここは駅前で昔から石鎚山に向かう人や、お遍路の人が行き交う場所なんですよ。三代目は料理の質を上げようと奮起し、高度成長期の洋食ブームの中でとり天やオムライスを提供していました。その後平成に入り、大衆食堂からイタリア料理店に転換しました。松山や新居浜への出店し、またそれらの店舗ではナポリピザの提供もはじめました

マルブンさんは地元の食材、生産者さんを大事にし、その後農家レストランや海鮮食堂も手がけるようになりました。現在マルブン小松本店には、社長がかつて修行時代によく食べていた「まかない飯」を眞鍋専務がアレンジした「五代目鯛めし」という「五代目」が名前に入ったメニューもあります。

眞鍋さん:この鯛はとにかくこだわって生産されていて。出会った当時は東京や大阪の高級店に出荷されていましたが、是非愛媛の皆さんに食べていただきたいと、養殖業者さんと商品開発を行いました
フロ:コロナ禍で鯛の養殖漁業も厳しいと聞きます
眞鍋さん:飲食業が厳しいことが報道で目立ちますが、生産者さんや仲卸問屋さんも皆苦しい状態です。お店の営業ができない時期に、『鯛ピザ』をクラウドファンディングで生産し、オンライン販売しました。その流れを経て、引き続き弊社らしさを愛媛の鯛を使って表現したいと思い、社長と相談して『五代目鯛めし』ができたんです

生産者さんと連携しつつ、常に新たなチャレンジを続けるマルブンさん。創業100周年を経てどのように進化するのでしょう。

フロ:今後の展望を教えてください
眞鍋さん:弊社の使命に『しあわせな食卓を創造する』というのがあるんです。そこにフォーカスした業態にある程度転換しつつ『食べる』ということを軸に色々と展開していきたいですね。変化にチャレンジします!
フロ:最後に専務の思うマルブンさんの『まじめさ』とは?
眞鍋さん:『まじめに』商売していますよ(笑)色々なところでこだわりを持ってやっています。スタッフの働き方、商品作り、生産者さんとの関係それぞれ一つとってもお客様に喜んでもらうために妥協するわけにはいかないですね。特に100年の歴史の中で、変えて良いところは変え、変えないところは変えない、ということを意識しています
フロ:お客様含め、スタッフ、取引先、全方位を大事にされているという印象です
眞鍋さん:そうでないと100年続かないと思います。私たちだけでできるわけではありません。100年営業させていただいて感謝しかないですね

あっという間に取材時間が過ぎていきました。口のケチャップを拭き取り、店外に出ると、JR小松駅を利用すると思しき地元高校生の姿が。お店の小窓から注文し、ベンチに腰掛け、それぞれソフトクリームを手にしています。

眞鍋さん:これは休憩時間でもずっと提供しているんですよ
フロ:そうなんですか!僕も買って帰ります

地域に根差し世代を超えて愛されるマルブンさん、ソフトクリームにその大衆食堂たる原点を垣間見た瞬間でした。

一方、店外には若い葡萄の木もありました。葡萄はお店のリニューアル前も植えられていて、蔦が壁を這っていたそうです。ふと見ると小さな実をつけています。こちらは次の100年に向け、マルブンさんの新たな挑戦がまた実を結び、大きく成長することを予感させるのでした。

マルブン小松本店

住所:〒799-1101 愛媛県西条市小松町新屋敷甲407-1

電話番号:0898-72-2004

営業時間:ランチタイム 11:00〜15:00 (LO 14:30)/ディナータイム 17:30〜21:00(LO 20:30)

定休日:月曜日(祝日の場合は翌日が振替休日)

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