
地域に根ざした麺処の老舗
菊屋
148年の歴史に込められた変わらない味を実食レポート!
こんにちは、まじめしライターの野本です。
宇和島市を訪れたら必ず立ち寄りたいお店があります。それは、明治10年から続く老舗の麺処「菊屋」。地元では「知らない人がいない」と言われるほどの名店なんです。
今回は、お店の人気メニュー・ちゃんぽんを中心に、菊屋の魅力をたっぷりとお届けしますよ!
菊屋にやってきました!
宇和島市の街中に佇む菊屋。昼時には行列ができるほどの人気店ということで、期待が高まります。
お店に足を踏み入れると、昔ながらの温かい雰囲気が迎えてくれます。店内にはテーブル席、小上がり、カウンター席とあって、家族や友人とはもちろん、1人でも気軽に入れるカジュアルな雰囲気。
地元の常連さんから観光客まで、様々なお客さんが訪れるそうです。奥には厨房があり、出汁の香りが店内に漂って、食欲をそそる…!
早速タッチパネル式の発券機で、気になるメニューを物色。
看板メニューのちゃんぽんを筆頭に、ラーメン、そば、うどんといった麺類が豊富に揃っています。
さらに、野菜や天かすなどのトッピングも追加でき、自分好みの1杯を作ることができるんです!
今回は、お店の人気No.1メニューの「ちゃんぽん」と、1度に3種類の麺が楽しめる「味くらべ」を注文しました。
地元民に愛されるメニューを実食!
まずは、菊屋といえばの「ちゃんぽん」をいただきます。野菜がたっぷり乗った、ボリューム満点の1杯が運ばれてきました!
宇和海で獲れたいりこを使用したスープは、さっぱりとしながらも深いコクがあり、最後の1滴まで飲み干したくなる優しい味わい。もやし、玉葱、人参、ニラ、筍、豚肉、蒲鉾などと具材も豊富で、特に細いもやしのシャキシャキとした食感が印象的です。
少し太めの自家製中華麺は食べごたえ抜群で、シャキシャキの野菜との相性も抜群。ちゃんぽんのサイズは選べるようになっていて、こちらは小サイズですが、しっかりとした満足感。麺が2玉入った大サイズは男性でもお腹いっぱいになる量ですが、女性でも完食される方がいらっしゃるそう!
続いていただくのは、迷った時にぴったりの「味くらべ」。ラーメン・ざるそば・カレーうどんが1つのお盆に並ぶ様子は圧巻!ざるそばは、ざるうどんに変更することもできます。
ラーメンのスープは、ちゃんぽんのあっさりとした優しい味わいとは対照的に、コク深い味わいが印象的。どこか懐かしく安心する味でありながら、輪郭がしっかりとしたスープです。
だしの効いたつけつゆでいただくざるそばは、清涼感が心地よい一品。麺は喉越しが良く、つるっとした食感が楽しめます!ちゃんぽんやラーメンのような温かい麺料理とは全く違った魅力があります。
カレーうどんの麺は、コシが強くてもちもち!トッピングされた、大振りの天かすが、スープを吸うことで柔らかく食感が変化し、さらにスープにコクまで加えています。まろやかな味わいでありながらも、スパイシーな刺激があり、癖になる美味しさです。
どのメニューも、単なる「美味しい麺料理」を超えた、深い味わい!いりこベースのスープは、宇和島市の海の恵みを感じさせてくれます。南予地方で好まれる甘めの味付けも、病みつきになる美味しさ。どれも土地の個性が詰まったメニューでした。
特に印象的だったのは、どのメニューも最後まで飽きることなく、むしろ食べ進めるほどに、新しい味の発見ができること!だしの奥深さ、麺の食感、具材の調和…すべてが計算され尽くしていながら、自然な美味しさに仕上がっているんです。
148年の歴史と五代目店主の想い
美味しいメニューを堪能したところで、五代目店主の前田宗一朗さんにお店の歴史とこだわりについてお話を伺いました。
野本:創業からなんと148年。ひとつのお店がこれだけ長く続くというのは本当にすごいことですよね。創業当時のエピソードなどはお聞きになったことはありますか?
前田さん:最初はそば屋として始めたと聞いています。
野本:そば屋からスタートして、今ではちゃんぽんやラーメン、うどんなど、様々な麺メニューが楽しめるお店に。そこには何か、きっかけがあったんでしょうか?
前田さん:そうですね。たとえばちゃんぽんに関して言えば、戦後に長崎県から宇和島市に中華麺の製法が伝わってきたことが大きいですね。中華麺を作れる業者さんがいて、それに合わせてもやし屋さんもできて、ちゃんぽんを提供できる環境が整っていきました。
野本:良い材料が宇和島で揃って、自然とちゃんぽんが生まれたんですね。
前田さん:そうです。当時のちゃんぽんは、豚肉ともやし、ネギだけのシンプルなものでした。それが少しずつ具材が増えて、今のようなボリュームになっていったのです。うちはサイドメニューが少ないので、一杯で満足してもらえるようにボリュームを意識しています。
野本:確かに、見た目のインパクトもありますし、食べ終わったときの満足感もすごかったです!麺やスープにも、やはりお店ならではのこだわりがあるんでしょうか?
前田さん:以前はうどんとそばの麺を自家製で作って、中華麺は業者さんから取り寄せていたんですが、今は中華麺を自家製にして、うどんとそばは外注に切り替えています。中華麺は少し太めで、食べ応えのある麺にしています。うどん、ちゃんぽん、ラーメンのスープは、全部いりこをベースにしていて、基本のスープは同じで、それぞれ味付けを変えて仕上げています。
野本:どれもいりこのだしがしっかり感じられるのに、それぞれ全然違う味になっていて、そこが印象的でした。そうやって味を守りながらも、変化を加える部分もあると思うんですが、続けていく中で大変なことも多いんじゃないですか?
前田さん:そうですね。やっぱり一番大きいのは、材料の仕入れ先が廃業されてしまうことです。宇和島市内では特に、年々そういう状況が増えてきていて、材料が手に入りにくくなってきています。
野本:なるほど…。それでも味を変えずに提供し続けるには、仕入れ先を見直したり、いろんな工夫が必要なんですね。
前田さん:例えば、うちで使っている細いもやしは、以前は宇和島の業者さんから仕入れていたんです。でも昨年、廃業されてしまって。仕方なく一時期太いもやしに切り替えたんですけど、お客様から「やっぱり細い方がいい」という声をたくさんいただいて。今は広島の業者さんにお願いして、細いもやしを取り寄せています。
前田さんの考える“まじめ” とは
野本:では最後に、前田さんの考える“まじめ” とはなんでしょうか?
前田さん:やっぱり、いつ来ていただいても変わらない味を提供できるようにすることですね。長年続けてきた味をこれからも守り続けたいと思っています。
野本:その味を求めて来られるお客さんも、きっとたくさんいらっしゃると思います。簡単そうに聞こえて、実は一番難しいことかもしれませんね。今日は本当に貴重なお話、ありがとうございました!
創業から148年。お客様に愛され続ける味には、日々の積み重ねと“変わらない努力” がありました。
味を守り続けることの大変さ、そしてそれを貫く店主の誠実さを、前田さんのお話から強く感じました。
どこか懐かしくて、心がほっとするような味。
松山市出身の私にとっても「この味を食べると帰ってきた気がする」そんな1杯でした。みなさんもぜひ、この“まじめな味” を味わいに訪れてみてください。
菊屋
愛媛県宇和島市中央町2-3-33
電話番号:0895-22-1145
営業時間:11:00〜15:00(L.O.14:40)、17:30〜20:00(L.O.19:45)
定休日:木曜日と月に1回水曜日