26カ国を旅した店主が大三島で営む古民家レストラン

古民家レストラン たまや

化学調味料や添加物を一切使用しない、

天然素材にこだわるお店のメニューを実食レポート!

こんにちは、まじめしライターの野本です。
突然ですが、みなさんは「親鳥」を食べたことはありますか?一般的な鶏肉よりもコリコリとした独特の歯ごたえが特徴の親鳥。初めて口にした人は、その力強い食感にきっと驚くはずです!けれど、一度ハマるとクセになる、そんな不思議な魅力を持っています。

そんな、親鳥をいただくことのできるお店を営むのは、千葉県出身の桑原珠代さん。千葉でドッグカフェを経営していましたが、2020年にご主人とともに大三島へ移住しました。しかも珠代さん、これまでに26カ国を旅し、フランスのルイ・ヴィトンで働いていたという異色の経歴の持ち主なんです。

どうして桑原さんが今治市・大三島に移住し、親鳥ラーメンを提供するお店を始めることになったのか。そして気になるこのお店のまじめしとは──!?さっそく取材に行ってきました!

古民家の暖簾の向こうには…?

大三島の集落の一番上、目の前に緑がいっぱいに広がる場所にお店はあります。そこに掛けられた「たまや」の暖簾をくぐると…
まず目に飛び込んできたのは、和とアンティークが絶妙に調和した洗練された空間!

大正ロマンを思わせる家具の数々が、この古民家に特別な空気を漂わせています。
30年の時を刻んだ椅子とテーブルや、大三島の生活雑貨店「木犀」で出会ったアンティークテーブル、屋根裏に眠っていた階段箪笥、ボヘミアンガラスの照明など…
ひとつひとつの家具にストーリーがあり、眺めているだけでも胸が高鳴ります!

このお店にはユニークな開店秘話が!

席につきメニューを眺めていると、桑原さんがユニークな開店秘話を教えてくれました。

桑原さん:お店のオープンは、去年の11月11日、11時11分11秒だったんです。

野本:えっ!?秒単位でピッタリですか!?

桑原さん:「11時11分にオープンしよう!」って決めてたんです。ちょうど、大工さんの親子が食べに来てくれていて。まだその時は喫茶だけだったので、コーヒーとケーキを出して、「はい、11時11分になったよ!」って言いながら(笑)そうやってお店が始まりました。

遊び心いっぱいのオープンストーリー。
では、どうして大三島で店を開くことになったのでしょうか?

ドックカフェ時代のお写真も見せてくださいました。

桑原さん:ある夜、検索エンジンに何気なく「神の島」って入れたら、大三島が出てきたんです。夜中の2時でした。「ここだ!」と思って、翌朝の9時にすぐ「空き家を見せてください」って電話しましたね。2020年7月14日の飛行機の最初の便で来たんですが、その日に空き家を見て、すぐに「買います」って即決しました(笑)。

そして3週間後には愛猫2匹と移住し、さらに1か月後にはご主人と愛犬も合流。
なんと移住して3か月後には同じ「たまや」という屋号で親鳥ラーメンとそばのお店をスタートしたんだそう。

それからも桑原さんは、理想の古民家を探し続けてきました。そして2023年7月、ついに思い描いていた通りの物件が不動産情報に登場。それが現在のお店となっている古民家です。
当時、仕事で和歌山にいた桑原さんは、その知らせを聞くや否や終電に飛び乗り、フェリーやバスを乗り継いで一番乗りで内見へ。迷うことなく、その場で購入を決めたそうです。その行動力に驚かされます!

桑原さんの大三島での暮らしと挑戦。その結晶ともいえるのが、こだわり抜かれた料理の数々です。
こちらではヴィーガンやグルテンフリーの対応もしてくれるとのこと。食の制限がある方とも食事が一緒に楽しめるのは嬉しいポイントですね!

どんなメニューを味わうことができるんでしょうか?早速いただいていこうと思います!食レポは、まじめし研修ライターのこの方にお願いします!

素材にこだわった、心も体も癒されるメニュー

はじめまして!まじめし研修ライターの食べることが大好きな戸嶋がお伝えします!

はじめに、お店の人気No.1メニュー「親鳥ラーメン」をいただきます!温かいものと冷たいものが選べるのですが、私は温かいものをチョイスしました。

桑原さんこだわりのスープはコクがあってとても濃厚。弾力のある特注麺とスープがよく絡んで箸が止まりませんでした!
スープには化学調味料や添加物が一切入っておらず、瀬戸内海産鯛や昆布など、なんと10種類の自然素材からとった出汁が使われています。使う素材はそれぞれ加熱時間が違うため、鍋を分けて出汁を取るのだそう。それぞれの素材の特徴や味を最大限に引き出しています。

親鳥は固すぎず柔らかすぎず、程よい噛み応えです!この親鳥の厚さにもオーナーのこだわりがあります。薄すぎると噛み応えがなく、厚すぎると筋っぽくなってしまうので、絶妙な厚さでスライスしているのだとか…!!程よい噛み応えで、噛めば噛むほどうまみが出てきます。

麺を食べ終えた後は、残ったスープにご飯と生卵を加えるのもオススメ。卵のまろやかさに、スープの塩味や出汁のコクが加わることで、深い味わいになります。

続いては、「ガレットランチ」をいただきます!季節の野菜ポタージュとオーガニックドリンクが付いてきます。ガレットは桑原さんが以前フランスで働いていた頃によく食べていたんだそう!
ガレットは3種類から選べて、定番の「ガレットコンプレ」や「大三島産イノシシミートソース」、ヴィーガン対応の「きのこのヴィーガンガレット」と「ラタトゥイユ」から選べます。今回は大三島のイノシシ肉を使った「大三島産イノシシミートソース」をいただきます!

グルテンフリーの蕎麦粉の生地は、練り上げてから一晩じっくり寝かせ、最高の状態で一枚一枚焼き上げているのだそう…!

大三島のハンバーガーショップ「井のイの!STAND」から仕入れた、スパイスが効いたソースともちもちのガレットが相性バッチリです!使用しているイノシシは大三島のみかんを食べて育つため、柔らかくて全く臭みがない!

今日のポタージュは大三島で栽培されたかぼちゃのポタージュでした。有機豆乳をベースに伯方の塩の藻塩と胡椒でシンプルに味付けしています。かぼちゃ本来の甘さが引き立っていて、とっても濃厚で感動しました…

続いては「クレームブリュレ」をいただきます!

大三島産の有機平飼い卵を使用したブリュレ!上白糖は使わず、てんさい糖を使用しているのだそう。大三島産の卵の優しい味わいを感じることのできるクレームブリュレでした!

最後に「胡麻豆腐」をいただきました!

こちらの胡麻豆腐、高野山の宿坊で精進料理の修業をしてきたオーナー渾身の一品なのだそう!!
「吉野葛粉100%」を使って丁寧に手練りされた胡麻豆腐は、ぷるぷるです!胡麻豆腐の上には、みたらしのような味わいの自家製醤油麹がかかっており、胡麻豆腐と相性バッチリです!!

大三島の恵みを思う存分堪能することができました!
以上、食レポは戸嶋がお届けしました!ライターの野本にバトンタッチします!

ありがとうございます!美味しいメニューを味わった後は、お店のことやメニューについて珠代さんにお聞きしました。

なぜ親鳥ラーメンを提供することになったのか

野本:そもそも親鳥ラーメンを提供しようと思ったきっかけは何だったんですか?

桑原さん:父が19年間山形県に住んでいたんですが、なぜか長く住んでいない私のほうが友達が多くて(笑)。その友人のひとりから「親鳥ラーメンが美味しいよ」って言われて。
山形の谷地と呼ばれる地域は、「肉そば」と呼ばれる麺料理の発祥の地で、温かいものと冷たいものの両方があるんですよ。面白いのは、真冬に雪が降っている中でも「俺は1年中冷たいの!」と言って、キンキンに冷えた肉そばを食べる人がいるんです。逆に、1年中温かいものを食べる人もいます。

野本:それくらい地元に根付いた食べ物なんですね。

桑原さん:それで一緒に日帰りで夫と山形まで出かけて、2人でそれぞれ6杯ずつ食べ歩いて研究しました。東京の新橋にあった親鳥ラーメンを出すお店にも足を運びました。ただ、そのお店はオープンして半年くらいでしたが、店内のあちこちに「入れ歯の人は食べるな!」「歯が折れる」なんてポップが貼ってあって(笑)。
関東ではまだ親鳥が知られていなかったんです。

野本:そうなんですか!?全国で食べられているものかと思っていました。

桑原さん:ただ、四国や中国地方では文化として根付いているんですよ。例えば今治焼鳥も親鳥を鉄板で提供しますし、香川県も親鳥が有名。岡山県の笠岡も養鶏が盛んで、親鳥文化がしっかり残っています。だから大三島でも、「親鳥ラーメン」と聞いてもすぐに理解してくれるんです。

実はこのお店では、食材を無駄なく活かすための工夫もされています。

桑原さん:今回食べてもらったクレームブリュレや、ガレット、ラーメンのシメに使っていた大三島で育った平飼い卵ですが、出汁を取った後の鯛の骨や昆布、干しシイタケなどを、養鶏場に引き取って頂き、鶏さんたちに栄養として還元しているんです。まさに究極のSDGs!

これは本当に感動的なシステム!完璧な循環が出来上がっています。

野本:お店のインスタグラムを見ていて気になったのですが、桑原さんは26カ国を旅していて、しかも5ヶ国語喋れるそうですね!?しまなみ海道という海外の方にも人気な観光地でお店をされていると、その経験が活かされているのでは?

桑原さん:フランス語圏の人が来ると、フランス語を話す人って日本にあまりいないから、とても喜んでくれます。今は翻訳アプリでなんとかなるとはいっても、やっぱり直接話すのは違いますから。そこは強みかなと思っています。それに、ヴィーガンの人もたくさん訪れます。ただ大三島はヴィーガンの店が全然ないので、ヴィーガン対応の料理もメニュー化したいと思っています。

野本:それは楽しみ!観光で訪れる方にとっても、食の選択肢が広がるのは嬉しいですね。

桑原さんが大切にしていること

美味しいお料理と素敵な空間、そして珠代さんの人生経験豊富なお話…全てが魅力的な「古民家レストラン たまや」での時間もそろそろ終盤に。これまでの様々な経験を経て、今お店をする上で大切にしていることを伺ってみました。

野本:これまでの様々な経験を経て、今お店をする上で大切にしていることは何ですか?

桑原さん:ここが今までやってきたことの集大成なんです。自分たちも楽しみながら、来たお客さんに他にはない空間とコミュニケーション、そして食を提供したいと思っています。海外からの旅行者から「泊まりがけで料理教室をやってほしい」という話もいただいていたりと、海外の方に日本の食文化を伝える機会も大切にしたいと思っています。

このお店にとっての「まじめ」とは?

野本:最後に、桑原さんにとっての「まじめ」をお聞かせください。

桑原さん:人との出会いを大切にしながら、できることをちゃんとやること。食材のひとつひとつと向き合い、丁寧に、心を込めて料理を作ること。そして来てくださったお客様に、ここでしか味わえない時間を提供することです。

26カ国を旅し、フランスで働き、高野山で精進料理を学んだ桑原さんが大三島の古民家で作り上げたお店は、まさに人生の集大成。

化学調味料を一切使わず、10種類の国産素材だけで作るスープ。ラーメンの出汁殻が鶏の餌になり、その卵でスイーツを作る究極のSDGsシステム。そして何より、食材と真摯に向き合い、お客様に特別な時間を提供したいという「まじめ」な想い。

大三島の豊かな自然に囲まれたこの古民家で、桑原さんの人生の全てが詰まったメニューが味わえます。民泊を始める準備もしているんだとか!皆さんもぜひ、大三島の「古民家レストラン たまや」を訪れて、美味しいメニューと人の温かさを体感してみてください!

古民家レストラン たまや

愛媛県今治市上浦町井口2986
電話番号:090-5444-0077
営業時間:ランチ11:30〜14:00(火・水・土・日曜・祝日)、ディナー18:00〜22:00(金・土曜)
定休日:月・木曜

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