三津浜で12年続く町中華

餃子のぶ

地元民に愛されるお店の開店秘話から、

お店自慢のメニューまで徹底レポート!

こんにちは、まじめしライターの野本です。
今回やって来たのは、私が幼い頃からよく来ていた松山市・三津浜。かつて港町として栄えたこのエリアに、ずっと気になっていたお店があります!

それは地元民に愛される町中華屋「餃子のぶ」。三津浜商店街の入口にある、赤いテントが目印のお店です。

暖簾をくぐると、まず目に飛び込んでくるのは壁一面に描かれた瀬戸内海の風景。松山在住の画家が書いた興居島(ごごしま)を望む美しい景色が、店内にいながら楽しめるんです。
中島行きのフェリーまで描かれたこの風景画は、地元民が見たら「あの景色!」と分かるほどの再現度。

このお店は2013年のオープンから今年で12年目。これまでの歩みと自慢のメニューについて、店主の渡部宣男さんにじっくり伺っていきます!

銭湯での会話から生まれた開店秘話

店主の渡部宣男さんは、もともと看護師として病院で働いていました。そんな渡部さんの人生を変えたのは、銭湯での何気ない会話だったのだそう。

渡部さん:先輩とお風呂で話していたときに、「唯一悔いが残るのは、大阪で勉強した餃子でお店ができなかったことや」って先輩が言っていて。その人は家業の建築屋を継ぐために愛媛に帰ってきて、夢だった餃子屋は諦めたんです。それで僕が「じゃあ、僕がそれやりますよ」って。

野本:え!?そんなに即決で!?

渡部さん:人の夢を叶えようかなって。他人のふんどしで相撲を取る、って言うと聞こえが悪いけど(笑)。でも、それまで餃子のことなんて全然知らなかったんですよ。

先輩から教えてもらったのは、使う材料だけ。「分量は自分で考えなさい」と言われ、半年間、毎日餃子作りの研究に没頭したそうです。
看護師の職を離れ、未知の世界に飛び込んだ渡部さん。その行動力には驚かされます!

お店の餃子の特徴とは

お店の餃子は、大阪スタイル。一般的な餃子とは大きく違う特徴があります。

渡部さん:大阪では野菜を「絞る」んです。洗濯機で脱水するくらい、完全に水気を抜く。そこに肉を入れるから、野菜がスポンジ状態になって肉の旨味を吸い込むんです。だから肉汁が出ない。軽くて、パクパク食べられる。

野本:なるほど!だから何個でも食べられるんですね。

渡部さん:焼肉でもロースばかりだと食べられないでしょ?大阪の「食い倒れ」の文化というか、さっぱり食べられる餃子なんです。それと、ショウガは絶対に入れない。これは先輩に言われたこと。5年ぐらい前にショウガ入りの餃子が大阪でブームになったけど、僕は乗りませんでした!

一体どんな味わいなんでしょうか!? 聞いているだけでお腹が空いてきました…
それでは、餃子をはじめとしたおすすめの一品を実食していこうと思います。食レポは、まじめし研修ライターのこの方にバトンタッチします!

餃子のぶのまじめしを実食!

こんにちは!まじめし研修ライターの、食べることが大好き・戸嶋がお伝えします!
まずは「ラーメン」をいただきます。

運ばれてきた瞬間、香ばしい醤油の香りに食欲がそそります!スープをひと口啜ると、鶏ガラの優しい旨味がふわりと広がり、どこか懐かしさを感じる味わい。
麺は製麺所に特注した中細ストレート。スープとの絡みがよく、喉ごし滑らかでつるつると箸が進みます。トッピングはしっとり柔らかなチャーシュー、シャキシャキのネギ、メンマ、そして半熟煮玉子。

渡部さん:製麺所の方もラーメン好きで、お互いに話しながら理想の麺を追求しています。
もともとは別の製麺所の麺を使っていたのですが、「自分の思う麺じゃないな」と感じて、今の製麺所に相談したところ、特注で作ってもらえることになりました。今は“ちょうどいい感じ”の麺に仕上がっていると思います。
僕の中には言葉では説明しづらい、「理想のラーメン像」があるんです。少しずつではありますが、自分の好きなラーメンに近づいている感覚があります。今58歳なので…65歳までには完成しそうな気がしますね。

餃子のぶの進化し続けるラーメンを、ぜひ食べてみてください!
お次は人気ナンバーワンの「自慢のからあげ」。運ばれてきた瞬間、その大きさに驚きました!

たっぷりのネギと自家製ダレがかかったからあげは、外はカリッと、中はジューシー。噛むと肉汁が溢れ出します。この自家製ダレが絶妙で、旨味たっぷりなのにしつこくありません。

からあげと一緒に食べたいのはやっぱりライス!餃子のぶのライスは西予市・宇和町の「田力本願株式会社」が作るお米で、品種は「にこまる」。みかんジュースの搾りかすを田んぼの土づくりに使った「みかんの循環栽培」で育てているんだそう。

大粒で程よい弾力があり、喉越しがよく、香ばしい香りと程よいもっちり感が特徴。唐揚げの濃厚な味わいとの相性も抜群で、箸が止まらない美味しさです!

最後にいただくのは、本命の絶品餃子!

最後はお店の名前にもなっている「餃子」です。一口サイズで食べやすく、焼き面はパリッと香ばしく、裏面はもっちり。噛むと野菜に染み込んだ肉の旨みがじんわりと広がります。

ショウガが入っていないので、ニラの風味が引き立ち、ビールとの相性は抜群!特製の酢醤油をつけると、さらに味わいが深まります。肉汁がドバッと出ないので、本当に何個でも食べられてしまいます。

メニューに込められた店主の情熱と探究心。その深い味わいを存分に堪能させていただきました!以上、食レポは戸嶋がお届けしました!ライターの野本にバトンタッチします。

ありがとうございます!ここからは、お店についてさらに詳しく伺っていきたいと思います。

三津浜商店街への深い愛情

野本:商店街の雰囲気はどうですか?

渡部さん:みんな仲良しですよ。それぞれみんなが「頑張ろう」って、一緒になって盛り上がる。ただ、飲食店がちょっと多い気がしていて。雑貨屋さんとか本屋さんとか、もっとあったらいいなと思うんです。ウインドウショッピングができるような店があれば、もっと人が集まってくると思いますね。

三津浜にはまだまだ可能性がある。そう信じて、渡部さんは今日もこの場所で餃子を焼き続けています。

野本:ずっと気になっていたんですが、このお写真って…?

渡部さん:フランス人アーティストのJRに撮ってもらった写真なんです!

店内の壁に飾られているのは、フランス人アーティスト・JRによるプロジェクトで撮影された渡部さん自身の顔写真。JRは東日本大震災後の福島でも活動した世界的なアーティストで、2013年には三津浜にも訪れました。当時、シャッター商店街に地元の人々の顔写真を貼り、まちに再び活気を呼び戻そうとしたプロジェクトだったんだそう。

「自分が主役」

12年間、お店を続けてきた渡部さん。その間、決して平坦な道のりではありませんでした。

渡部さん:オープンしてから12年間、いろいろありました。家族のことや社会情勢、経済的なこと…。正直、ずっと大変だったんですよ。

野本:それでも続けてこられたのは、なぜですか?

渡部さん:僕は「自分が主役」だと思っているから。自分が主役だという確かな時間を持つ。この地球で、自分を中心に回している、という自信。そうすれば、何が来ても負けない。大変なことがあっても、常に一歩進む。それだけです。悲劇のヒロインにはならない。良いことが起こるし、落ちることがあっても、自分が主役。

その言葉には、どんな困難も乗り越えてきた強さと、前向きな人生観が滲み出ていました。

渡部さんにとっての「まじめ」とは

野本:最後に、渡部さんにとっての「まじめ」をお聞かせください。

渡部さん:自分を本気で楽しませることに真面目でいること。楽しんでいる人は、周りも楽しくさせる。僕は今、すごく楽しんでお店を営業しています。

野本:なるほど。それが溢れ出て、お客さんにも伝わっていくんですね。

渡部さん:そう。溢れたものが相手に届くから、嘘偽りのないものが届く。同業者の中には、どこか「お客さんを売上の一部として扱うような接し方」をしている人もいます。あれは違う。だから僕は、溢れた本物を届けたいと思っています。

野本:「どうすれば買ってもらえるか」という事務的な考え方ではなく、「どうしたら喜んでもらえるか」という想いを大切にして、お客さんと向き合っているんですね。その姿勢が、料理の味やお店のあたたかい空気にもにじみ出ている気がします。

最近は外国人観光客も多く訪れるという「餃子のぶ」。三津浜が韓国や台湾のガイドブックにも載っているそうで、空港からタクシーでわざわざ来てくれる人もいるんだとか。

渡部さん:外国人と話すのも楽しいですよ。自分が動かなくても、毎日旅行している気分。どこから来られたんですか?って聞くと、だいたい分かる。「この人は旅行じゃない、仕事だな」とか。行ったことのない場所の話を聞いて、情報をもらえるのが嬉しいんです。

65歳までは店を続けたい、と語る渡部さん。できれば病気をせずに、健康第一で。そして、進化を続けるラーメンを完成させたい——。

先輩の夢を引き継いで12年。看護師から餃子屋へ転身し、大阪スタイルの餃子と、自分だけのラーメンを追求し続ける渡部さん。「自分が主役」という揺るぎない人生哲学と、自分を楽しませることで周りも楽しくする、そんな「まじめ」な姿勢が、この店を支えています。

皆さんもぜひ、三津浜の「餃子のぶ」を訪れて、この特別な時間を体験してみてください!

餃子のぶ

愛媛県松山市住吉1-4-18
電話番号:089-952-6001
営業時間:11:30〜14:00、17:30〜21:30
定休日:火曜

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