白賁堂 柴田モナカ本舗
愛媛で愛され続ける〇〇。大久保利通も認めた味の秘密はまじめさにあり!?
そんな老舗社長から信じられない発言が!?
ライターの山本清文です。
愛媛県四国中央市にやってきました。四国中央市の和菓子といえば?多くの方が『柴田のモナカ』と答えるのではないでしょうか。
リニューアルした店舗。老舗の風格があります。
2022年で創業250周年を迎えた、老舗の中の老舗。9代目社長・柴田浩之さんにお話を伺います。
昭和27年からこちらの商店街に、そして2年前に隣のお店からリニューアルし現在に至ります。
元々のお店もお隣に。歴史を感じます。
元々こちらは出張店でしたが、川之江駅が出来たことで人の流れが変わり、こちらが本店になったそうです。いや、ということは当たり前ですが、川之江駅が出来るより前からお店があったんですよね。 店内には昔の写真、数々の受賞の証が展示されています。
これはもう歴史的資料!
ご覧ください!この数。お店にずらり!
柴田さん:明治十年に時の内務卿大久保利通公が主催した、第一回内国勧業博覧会にて、褒状をいただいたと聞いています
山本:大久保利通!?歴史上の人物やないですか!?教科書でみた名前(笑)
柴田さん:残念ながら、その時いただいた褒状の現物は、今どこ行ったかわからないんですよ。私も、褒状現物を写した写真しか見たことないんです
250年の歴史は伊達ではありません。
博物館レベルの賞状は、展示されているもので大正一桁台のものも。
柴田さん:結構古くからやっているみたいですね(笑)
山本:いやいや、他人事のように!(笑)
当時の雰囲気が伝わってくる写真。カステーラの文字がレトロでかわいい!
柴田さん:参勤交代で土佐藩山内公が江戸に登る際に、徳島から船に乗るのでなく、山を越えて川之江まで来て、穏やかな瀬戸内海を通るルートもあったようです。川之江で宿泊されて、そのときに私共の、モナカを召し上がっていただいたんです。そうしたご縁もあって、私共は、土佐藩御用達を務めさせていただきました
山本:高知のお菓子ではなく、愛媛のお菓子というのが嬉しいですね!250年の歴史が繋がっているんですね
賞状は店内には収まりきらないくらいまだまだあるんです。
山本:柴田のモナカさんって、柴田ではなく、看板に他のお名前が書いてありましたね?あれは・・・
白賁堂(はくひどう)と読むそうです。
柴田さん:そうなんです。屋号が「白賁堂」といいまして。これは、四書五経のひとつ「易経」の中の、「白賁。无咎。」という一節にちなんだものです
山本:どういう意味が込められているんですか?
柴田さん:白く賁る(飾る)こと、すなわち「純白」を称えておりまして。真っ白な心で本業に専心しなさい、という意味が込められております
山本:本業とはつまり、おいしいお菓子を作る、ということですね?
柴田さん:その通りです。真っ白な心を忘れないようにがんばっています
店内どこを撮っても画になります。
山本:今回まじめがテーマなんですが、もう、屋号にまじめさが込められていますよね。しかもそれを実践されているからこその、250年続いているんですね
柴田さん:ありがとうございます。「伊予聖人」といわれる儒者・近藤篤山先生(1766〜1846)につけていただいたんですが、本当にいい屋号をいただけたなと思います
山本:すごい!確か近藤篤山は四国中央市出身ですもんね。表の看板も趣ありますよね?
柴田さん:あれは、船の底板を使って作られているんです。良く見ると貝殻がついていますよ(笑)
山本:9代目は元々家業を継ぐつもりでいらっしゃったんですか?
柴田さん:実はわたしは、一般企業に就職していたんですよ
山本:あら。もしよかったらどのようなことをされていたのか伺ってもよいでしょうか?
柴田さん:はい。味の素kkという会社にお世話になっておりました
山本:え!!すごい大企業じゃないですか!?
カステラもモナカに並ぶ人気商品。
柴田さん:ありがとうございます。味の素kkも私共も、食品の会社という意味では共通するところありますし、いろいろな部署を経験させていただけたのはよかったです。賞味期限の決め方とか、商品開発の進め方とか、サラリーマン時代にやっていたことが、今に活かされています
山本:確かに。最初からあんこ職人一本だったらわからないこと、体験できないことですよね
柴田さん:おっしゃる通りですね。前の仕事もやりがいがあったんですが、35歳まで会社員をやってるうちに老舗の看板の社会的な重みがわかってきて、自分が後を守っていかないといけないな、という責任感も生まれてきました
山本:すごいなぁ。老舗の看板はこんな風にして引き継がれ、守られているんですね
さて、柴田さんのモナカをいただきましょう!
これが『柴田のモナカ』。少し紫っぽくて透明感のあるあんこが特徴なんです。
これこれ!という上品な甘さを堪能。
山本:おいしい!この上品なあんこの甘さ。べたべたしない。あんこってこんなおいしいんだなと、再発見。他のモナカと何が違うんですか?
柴田さん:ありがとうございます。あんこにも種類が色々ありまして、業界の分類では、水あめが入ってて、ネバくて甘くて黒い餡を「もなか餡」と定義しています。だから一般的なもなかの餡は、ほとんどが甘くて黒いんです
山本:でもこれ、柴田さんのもなかってどちらかというと、紫っぽいですよね
柴田さん:そうなんです。水あめを入れないとか、作り方がよそとはちょっと違うんです
山本:昔からあるのに、定番の作り方ではないのに、受け入れられている甘さというのがすごいですね。というか、あんこって素人目には、こんなに違うのか?と思うんですが、違うんですね?
安永元年創業の文字。250周年おめでとうございます!
柴田さん:違うんですよね。もなかというお菓子自体は、平安時代からあったみたいです。でも、うちのご先祖様は、一般的なつくりかたでなく、独自の製法で、独自の味をつくりつづけてきたということでしょうか
山本:柴田さんはモナカがあまりにも有名ですが、他にもお勧め商品ありますか?
柴田さん:私が一番好きなのは、かすてらまんじゅうです
柴田社長が一番好きだという、かすてらまんじゅう。
山本:社長は、甘いものはお好きなんですか?
柴田さん:いや、甘いものは好きですが、実は僕は洋菓子の口で。小さい頃はあんこは食べられなかったんです
山本:えー――!
柴田さん:もちろん、今は食べられますけど(笑)。苦手だったんですよ
山本:逆に、あんこの苦手な方の気持ちがわかるからご自身が美味しいと思うあんこを追求することができますよね
かすてらまんじゅうはこしあん!うすいかすてら生地との相性がバツグン!
柴田さん:そうなんです。あんこと一言でいっても、作り方、砂糖の量、全部違いますからね
山本:社長になって17年、振り返ってみていかがでしょう?
柴田さん:大変なことばっかりが思い浮かびます(笑)。あんこを炊く修行もしたし、世代交代の段取りも大変でしたし、新しいお店も設計からやって。コロナもありましたし
山本:でも今日も、たくさんお客さんいらっしゃってますよ
柴田さん:ありがたいですね。でも、昔と違って最近は、うちの他にもいろんなおいしいお菓子が増えてきてますし、あんこを食べる文化が昔に比べて減ってきています。あんこの魅力を伝えていきたいですね
山本:新しいことも考えられているんですか?
柴田さん:私が社長になってから開発したのが、ちよこまん
チョコレートがふんだんにはいったお饅頭。和洋折衷です。
山本:チョコレートのおまんじゅう?
柴田さん:手亡豆で炊いた白あんに、チョコレートをたっぷり、本当にたっぷり練り込んでるんです
山本:これは、もうチョコレートですよね!いやでもほんのり和も感じる!
チョコの濃厚さに思わずのけぞります。
三笠はホクホクの粒あん!食べ比べることであんこの違いを実感。
柴田さん:ありがとうございます。夏は、ソフトクリームもご用意しています。餡子にあうソフトクリームを見つけてまいりました。そこに、粒あん、こしあん、モナカ餡、コーヒー餡を選んでいただき、トッピングして召し上がっていただいています
山本:斬新!あんこの魅力を若い人にも知って欲しい。という思いから誕生したということですね
ソフトクリーム&餡子。餡子はいろんな種類から選べます。
山本:柴田さんにとって、まじめとは何ですか?
柴田さん:まじめというと、思い出すのは、おばあちゃんが僕が結婚したときに掛け軸をくれたんです。『正しく優しく思いやり』そこには当たり前のことが書いていました。なんでこんな当たり前のことを掛け軸に?と思ったんです。でも、老舗について書いてある本を読んだのですが、老舗の家訓というのは、だいたいなんてことない当たり前のことなんですって
山本:当たり前のことを当たり前にやる。ということですか?
柴田さん:ちょっとうまいことやって一発あててやるみたいなやり方は結局、続かないんです。お客さんの信頼を得られないんですよね。そんなやり方では老舗にはなれない、ということみたいです
まじめにというのは当たり前のことを当たり前に続けること。この当たり前のことが出来るというのが、難しいんです。進化し続ける老舗のまじめなあんこ。ぜひ召し上がってください。
白賁堂 柴田モナカ本舗
住所 :〒799-0101愛媛県四国中央市川之江町1794-3
電話番号:0896-56-2232
営業日:8:00〜19:00
定休日:水曜日