酒蔵カフェ はつゆき
砥部観光に一息!
江戸末期に建てられた、優しい陽光が差し込む空間でいただく
酒蔵ならではのカフェメニュー
こんにちは!まじめしライターの岩畑です。
みなさん、早速ですが愛媛のイメージといえば何を思い浮かべますか?!
県外出身の私はやはり柑橘や鯛を想像したのですが、まじめえひめプロジェクトの取材をいくつかする中で、愛媛には酒蔵が35件もあるということを知りました。(※愛媛県酒造協同組合 愛媛県酒造組合HPより)
さまざまな特徴の酒蔵がある中で、砥部町にある「協和酒造」では酒蔵とカフェが併設されているらしく…。酒蔵に併設されたカフェ…?!一体どんなまじめしが食べられるのか?と、早速「酒蔵カフェ はつゆき」へ行ってきました!
砥部焼伝統産業会館の近くにお店はあります。歴史を感じる建物。行ってみましょう!
扉を開けると、そこには日本酒や梅酒、砥部焼の器が。建物1階のこのスペースは直売所で、協和酒造の作る日本酒やカフェで使われる砥部焼の器などが販売されているそうです。
お店に一歩足を踏み入れた時から感じる、甘い香り…。直売所の裏手に酒蔵があるからでしょうか、もろみのような香りがお店全体を包み込んでいます。
この直売所を抜けて階段を上がると…。
優しく外光が入り込む、ひろ〜いスペース。そう、ここが「酒蔵カフェ はつゆき」です!
江戸末期に建てられたという酒蔵の2階部分をリノベーションしたこの空間。ずっしりと大きな剥き出しの梁や柱、土壁や高い天井からは落ち着いた雰囲気が感じられます。歩くと少し軋む床板もどこか懐かしい…!
そして、この大きなテーブル。実は、日本酒を作る際に使われるタンクの蓋だそう!酒蔵ならではのアイデアですよね。
キッチンスペースとの間には砥部焼の器が並ぶ棚。色とりどりの器にワクワクしてきました。
酒蔵だから楽しめるカフェメニュー
「酒蔵カフェ はつゆき」でいただけるメニューはこちら!
酒蔵ならではのドリンクや食事が揃います。時間はお昼12時!お腹ペコペコ!ということで色々注文してみました〜!
まず最初にいただいたのがこちら!パンランチの「トマトとバジルのピザパン」と「酒蔵のノンアルコール甘酒(ホット)」。
このプレートめちゃくちゃ可愛いですよね!?これは砥部焼の窯元「大西陶芸」の器。はつゆきで食事をする際は器にもぜひ、注目してください。
それでは、いただきま〜す!
まずは、ピザパンから。こちらのパンは同じく砥部町にある「IPPO(いっぽ)」というお店の手作りパンを使っているそうです。
もちもちのパンとトロ〜リとろけるチーズがたまらない!シャキシャキ食感のサラダも美味しい。プレートの上に乗っているお猪口には、甘酒(アイス)。めっちゃ健康的な食事ですよね!
一緒にいただいたホットの甘酒には米麹がたっぷり!砂糖を使わずに作られた甘酒はお米の優しい甘さとまろやかさ。そしてトッピングの生姜がピリッとアクセントとなり、少し大人の味わいになっています。
お次は、「とべりてプレートセット」に「てっぺん紅茶」を合わせてみました。
こちらのプレートは「きよし窯」のもの。ミモザの絵が可愛らしい〜!
まずはてっぺん紅茶を一口…久万高原で手摘みされた茶葉は、苦味が少なくとても優しい味。ホッと一息つける、まさにそんな味わいです。
そして、実は先程の直売所で気になっていた「酒蔵のバームクーヘン」と「酒蔵のチーズケーキ」。どちらも甘酒と酒粕を使っているそうです。
しっとりとしたバームクーヘンを一口食べると、酒粕の香りと味が広がる〜。上品な甘さなにびっくりしました。
そして、チーズケーキ。こちらもフォークがすっと通るほど滑らか。まず酒粕と甘酒の香りが口いっぱいに広がります。その後にふんわりとチーズの味わいが追いかけてくる。
生クリームをつけたり、七折小梅のシロップをつけて食べるとまた違った味わいを楽しめます。
お次は、砥部町特産品の梅「七折小梅(ななおれこうめ)」で作られたシロップを使った、「七折小梅ソーダー」。
柔らかな酸味と甘味がクセになる味わいのソーダー。何よりも七折小梅の香りにびっくり。ストローで混ぜるたび、豊かな梅の香りがふわっと香ります。
そして最後に、やっぱり協和酒造のお酒を味わいたい!ということで「おすすめ日本酒飲み比べ3種」も。
右から、初雪盃「月光(純米吟醸)」、初雪盃「無濾過生原酒(特別純米酒)」、愛媛さくらひめ酵母を使用した「さくらさらさら(純米大吟醸)」。季節によって種類が変わるそうです。
まずは、純米吟醸の初雪盃「月光」を。こちらは、秋限定で楽しめるお酒なんだそう。柔らかな甘味としっかりとした旨味があります。フルーティーな香りが特徴的!
次は、特別純米酒の初雪盃「無濾過生原酒」。爽やかなフレッシュ感が最初にきて、円やかな旨味と心地よいキレを楽しめる!さらっとしているので食事と合わせるのも良さそうです。
そして、純米大吟醸の「さくらさらさら」。愛媛県産山田錦を100%使用したフルーティな味わい。後味がキリッとしているので、日本酒の甘さや爽やかさのいいところを一気に味わえます!
実はこの日本酒には、愛媛県オリジナル品種の花「さくらひめ」から分離された 酒蔵用花酵母の「愛媛さくらひめ酵母」が用いられています。Type1〜4まであるそれぞれの特徴的な酵母と、県内産にこだわった米や水など、「オール愛媛」で醸す新世代の日本酒なんだそう!
この「愛媛さくらひめ酵母」を使った22蔵のお酒を楽しめる、「ほろよいフェスタ2023」が10月5日に開催されるので、気になった方はぜひ足をお運びください!
少し話はそれましたが…協和酒造の日本酒は、個人的にどれも飲みやすくて美味しく感じました!ぜひみなさんも飲み比べをしながら、お気に入りの銘柄を見つけてください!
品質を重視した仕込みにこだわる酒造り
たくさんのメニューをいただき、協和酒造のお酒や、はつゆきで提供される食事について知りたいことがたくさん出てきました!ということで、協和酒造の専務取締役・谷口直子さんにお話を聞いてみましょう。
岩畑:まずは協和酒造のことを教えてください。
谷口さん:もともと、この建物で越知家がお酒を造っていました。その後、酒造免許を明治20年に譲り受け、創業は「三谷酒造店」として始まりました。戦争の影響で昭和18年になると酒を造ることができなくなり、廃止工場となってしまったんです。終戦後、酒造家4社が集まり、合同で設立されたのが「協和酒造株式会社」です。
父が五代目で、弟が六代目の予定です。弟がお酒の製造を中心に、私がカフェの運営や直売所など全般的なことを担当しています。
明治20年創業。なんと協和酒造は今年136年を迎えるそうです。そして、協和酒造といえば「初雪盃(はつゆきはい)」。一つひとつの作業を手作業で行い、昔ながらの『槽しぼり』や『袋しぼり』にこだわった酒造りは、長い歴史の中でも変わらず受け継がれているそうです。
先ほどいただいた、「おすすめ日本酒飲み比べ3種」もどれも美味しく、旨味を楽しみました!
岩畑:初雪盃の特徴はありますか?
谷口さん:しっかりとした味わいと、甘み・旨味があります。甘口の日本酒だけでなく、辛口のものも、旨みの後にキリッとした味わいを楽しめるのが初雪盃の特徴です。銘柄にもよりますが、甘口・辛口に関わらず、どれも優しい旨味があるので日本酒を飲み慣れていない方でも、割と飲みやすいと言っていただけることが多いです。
岩畑:初雪盃「月光」とありましたが、季節の日本酒もあるのですか?
谷口さん:うちは季節の商品が割と多いです。3月は「春月夜」、5月末〜8月は「夏のお酒」。9月は「月光」、10月に「秋あがり」、11月に「寒燗歓」という、温めて飲むと美味しいお酒を出します。そして、12月には新酒。
新酒らしい春のお酒や、少しすっきりとした夏、寝かせることで旨味の乗ってきた秋のお酒と、一年かけて楽しめます。もちろん定番のものもあるけれど、シーズンごとに味わいの違う日本酒をお客様に楽しんでいただけるようにしています。
今回飲んでいただいた「月光」は秋のお酒なので、旨味の強いお酒にしています。愛媛では秋になると「いもたき」など、少し甘辛く濃い味付けのものを食べることが多くなるので、秋の食材にも負けない旨味が感じられる日本酒を造っています。
一年を通して、さまざまな味わいを楽しめるって素敵ですよね!月光もとても美味しかったので、そのほかの銘柄もどんな味わいなのか気になります!!
そして、気になるのがもう一つ!先ほどご紹介した、「3種飲み比べ」の中の「さくらさらさら」。「さくらひめ」から採れるType1〜4の酵母を使い、愛媛県内の22蔵がオリジナルの日本酒をつくるプロジェクトなのですが、協和酒造ではType1の酵母を使い「さくらさらさら」を造られています。完成するまでのお話を聞いてみましょう!
岩畑:「さくらさらさら」を造り上げる際に試行錯誤されたことはありますか?
谷口さん:実を言うと、そんなに苦労していなくて、すんなりと完成したんです。発酵も含めて、とてもいい感じに仕上がり、こんな味わいのお酒になるといいな〜と思っていた通りに出来上がりました。
Type1の酵母はフルーティーで甘味が出る酵母。だから、協和酒造が得意とする甘口・旨口の造り方とType1の酵母は相性が良く、なんとなく最初からできそうだなと思っていました(笑)。
悩んだところといえば、ボトルデザインですかね。愛媛の伝統工芸・四国中央市の水引を使っているのですが、デザイナーさん、水引業者さんと試行錯誤しました。この水引のおかげで、「さくらひめ」の雰囲気がでたのかなと思います。
協和酒造の「さくらさらさら」のボトルデザインは本当に可愛らしいんです!食卓にあるだけでパッと華やかになりそうですよね!キリッとした味わいの後にふんわりと感じるフルーティーな余韻の日本酒は、食中酒にもぴったりなので、気になった方はぜひチェックしてください!
酒蔵だから作れるメニューと彩を添える砥部焼
長い歴史を紡ぐ協和酒造の2階スペースで開かれるカフェ。こちらも気になりますよね!お話を聞いてみましょう!
岩畑:とても雰囲気の良いスペースに心からリラックスしてしまいました(笑)。お客さんの反応はいかがですか?
谷口さん:まさに岩畑さんのような反応ですよ(笑)。直売所の雰囲気からはカフェスペースは想像できないようで、みなさん一同に「わーー」っと驚いてくださいます。
ゆったりとしたスペースと、木の雰囲気や酒蔵の香りがあるみたいで、蔵ならではの雰囲気をのんびり楽しんでいただくお客様が多いです。メニューも地元のものを中心に、酒蔵ならではの甘酒や日本酒の飲み比べ、チーズケーキやバームクーヘンなどを提供し、どれも良い反応をいただいています。
岩畑:どれも美味しかったのですが、中でも酒粕と甘酒の入ったチーズケーキとバームクーヘンには驚かされました!
谷口さん:カフェをオープンする際、地域の方達のお力添えをいただきました。その時に、「はつゆきならではのお菓子を作りたい」と相談したところ、愛媛の銘菓「畑田本舗」さんとお付き合いのある方がいて、その方経由で畑田本舗さんにオリジナルフードの相談をしたんです。もう少し風味があったほうがいいよね〜などと試作と改良を重ね、今の形に辿り着きました。
1階の直売所でテイクアウトもできます。
岩畑:酒粕の風味がとても豊かに感じられて、びっくりしました。酒蔵だから出せる味わいは本当に美味しかったです!
その美味しい食事を彩る砥部焼もとても素敵でした。砥部焼を使うようになったきっかけは?
谷口さん:はつゆきで食事を提供する際は、ぜひ砥部焼を使いたいと考えていて、そのことを砥部焼の窯元「大西陶芸」さんに相談していました。そこで、提案いただいたのが先ほどの四角いプレートです。その際、周りの「とべりて」(砥部焼の女性作家チーム)にも声をかけてくださり、8人いる「とべりて」にプレートと蕎麦猪口、ティーカップをセットで作っていただきました。
お客さんに楽しんでいただけるように、例えば2人でカフェにお越しの際は、別々の窯元の食器で提供をしています。
岩畑:砥部焼の器のディスプレイを見ているだけでもワクワクしちゃいました!
谷口さん:この辺にいらっしゃる方って、砥部焼に興味を持たれている方が多いと思うんです。好きな窯元に出会うきっかけや、知っている窯元でも新しい絵柄などの発見をしていただけると嬉しいです。はつゆきにお越しくださる事をきっかけに、砥部の窯元を回っていただけるといいなと思っています。逆に、窯元さんでも、「はつゆきに行ったら甘酒が美味しいよ〜」と案内をしてくださっているようです(笑)。
はつゆきでは、気に入った絵柄のプレートや、応援している窯元のプレートを選ぶこともできるそうです。(店が忙しい時は難しい場合あり)
はつゆきで気になる窯元の食器で食事を楽しんだ後に、窯元を巡るのも楽しそうですよね!
最後に、谷口さんにお店のこれからについて聞いてみました。
岩畑:明治20年に創業し今まで、さまざまな歩みがある中で、これからや挑戦してみたいことはありますか?
谷口さん:人手があれば…なんですが、米麹を使った加工品を作れたらいいなと思っています。いつか加工場を作って、オリジナル商品が作れたらなと思っています。
岩畑:バームクーヘンなどもとても美味しかったので、新たなオリジナル商品は楽しみです!最後に、谷口さんにとって“まじめ”とはなんでしょうか?
谷口さん:はつゆきのことを、たくさんの人に知ってもらいたい気持ちもありますが、まずは砥部町や愛媛県の魅力を知ってもらいたいなと思います。その中で、観光などではつゆきにお越しいただくお客様には、できるだけ自分の持っている砥部の魅力や砥部焼のこと、協和酒造のことなど、さまざまな情報をお客様にお伝えして、知ってもらうきっかけになればいいなと思います。お客様にしっかりと向き合って、少しでも楽しんでいただけるように取り組むことが、私にとっての“まじめ”なのかなと思います。
昔ながらの歴史を守りつつも、新しいことにチャレンジする「協和酒造」そして「酒蔵カフェ はつゆき」。今後どんな進化をするのかがとても楽しみです!
ちなみに…!協和酒造では酒蔵の見学もできます。日本酒がどんな工程でつくられているのかが気になる皆さま!ご予約の上、参加されてみてはいかがですか?もちろんそのあとはて「酒蔵カフェ はつゆき」でゆったりとしたカフェタイムをお楽しみください♪
酒蔵カフェ はつゆき
愛媛県伊予郡砥部町大南400
電話:089-962-2717
営業時間:土日曜日・祝日11:00〜15:30
定休日:月〜金曜日
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