
70年の伝統と革新が織りなす和菓子の世界
一福百果・清光堂
愛媛県の素材を活かした、
心温まる和菓子作りを続ける老舗店を取材!
こんにちは、まじめしライターの野本鈴夏です。
突然ですが、みなさんは和菓子にどんなイメージをお持ちですか?
「伝統的で格式高い」「特別な日に食べるもの」そんな印象をお持ちの方も多いかもしれませんね。
でも今回ご紹介するお店では、そんな和菓子の概念がきっと変わるはず!愛媛県の豊かな自然の恵みを活かし、伝統を大切にしながらも常に新しい挑戦を続ける老舗和菓子店があるんです。
今回お邪魔したのは、今治市にある「一福百果・清光堂」。
素材にとことんこだわり、三代にわたって愛され続けている和菓子の名店です。
静かな住宅街の中に佇むお店は、「福のおとづれ」という文字が書かれた、なんとも縁起の良い看板が印象的。
一体どんな魅力的な和菓子に出会えるのでしょうか。早速お店に向かってみましょう!
一歩店内に足を踏み入れると、色とりどりの美しい和菓子がずらりと並んでいます。
店内は日当たりの良い落ち着いた雰囲気で、壁には数々の受賞歴を示す賞状が飾られ、長年にわたってお客様に愛され続けてきた歴史を物語っています。
三代続く老舗の歩み
一福百果・清光堂は、昭和27年の創業以来、なんと70年以上もの間、地元愛媛県の素材を活かした和菓子作りを続けています。現在は三代目の益田寛規さんが伝統を受け継ぎながら、和菓子作家・坂本紫穂さんとコラボレーションした新ブランド「ひる凪」を立ち上げるなど、常に新しい挑戦を続けているんです。
このお店の最大の特徴は、地元愛媛県産の素材への並々ならぬこだわり。二代目が考案したフルーツ大福用のみかんは、宇和島、西宇和、八幡浜の生産者さんに特別に作ってもらっているんだそう。
その他にも、「きぬ青のり」は段畑で有名な愛媛県宇和島市遊子のもの、砥部焼きで有名な砥部町の特産品「七折小梅」を使用しているなど、まさに「愛媛県の恵みを丸ごと味わえる」和菓子店なんです!
そして、このお店には地元への深い愛情を物語るエピソードも。
それは看板商品でもある「椀舟最中」の誕生秘話。創業地である桜井では、かつて地元で生産される漆器を瀬戸内沿岸や大阪、九州に運ぶ「椀舟」という帆船が活躍していたんだそう。一代目は、「桜井の歴史を後世に伝えたい」という想いがあり、その椀舟を模した最中を作ったんだとか。その椀舟最中は、第16回「全国菓子大博覧会」で金賞を受賞。今も多くの人に愛され続けています。
こうして初代から三代目まで、それぞれが地域への愛情と和菓子への情熱を受け継いできたからこそ、70年という長い間、地元の人々に愛され続けられてきたのですね。
お客様想いの接客が心に響く、お店の「まじめ」な想い
早速お店を見学しながら、商品を購入!
商品を選んでいる際に、それぞれのお菓子の特徴や美味しい食べ方を詳しく説明してくださり、お客様への細やかな配慮が随所に感じられました。そんな丁寧な仕事ぶりの背景には、どのような想いがあるのでしょうか。
三代目のお姉様、大西寛恵さんにお店への想いについてお話を伺いました。
野本:地元のお客様との関係で、印象に残っているエピソードはありますか?
大西さん:おじいちゃんが椀舟に乗っていたというお客様が来店してくださって!今までそういったことがなかったので驚きました。実際に椀舟最中を買いに来てくださったのが嬉しかったですね。
野本:地元の歴史を大切にしてきたからこそ生まれる、心温まるエピソードですね。和菓子を通じて地域の人々とつながっているのを感じます。それでは、今後チャレンジしてみたいことや展望はありますか?
大西さん:もっと気軽に立ち寄れるような場所にしていきたいと思っています。今はイートインスペースで、ドリンクと和菓子を楽しむことができます。メニューを検討しているのですが、カフェ営業もしたいと考えています。
後は、お客様に長く利用してもらえるように、飽きられないように「見たことない!」と思ってもらえるような、そんな商品を1年を通してお客さんに提供したいと思っています。
地域への愛情、お客様への思いやり、そして常に向上心を持ち続ける姿勢。
大西さんのお話を聞いていると、「まじめに仕事に取り組む」ということの本質が見えてくるような気がしました。そこで改めて、大西さんにとっての「まじめ」について伺いました。
お店にとっての「まじめ」とは?
大西さん:贈答用に購入された方に、「どういう場面でお渡ししますか?」とこちらから聞いてみるようにしています。お届け日も、「この日に着いた方が一番状態がいいと思います」とか、なるべくお客様の思いに寄り添った対応をしています。メッセージカードや熨斗がいるかいらないかなども細かく確認します。そういう積み重ねが、まじめさなんじゃないかなと。
大西さんこの言葉を聞いて、お菓子が単なる商品ではなく、贈る人・受け取る人の大切な思い出になるんだなと実感しました。
愛媛の恵みを堪能!絶品和菓子を実食
研究所に戻ったきたところで、お店の代表的な商品から新ブランドまで、幅広く実食してみようと思います!どれも愛媛県の素材の魅力が存分に活かされた逸品ばかりです。
まずは、三代⽬と和菓⼦作家がコラボレーションした新ブランド「ひる凪」と、お店を代表する和菓⼦3品をいただきます。
志島ヶ原の穏やかな海をイメージしたという透青は、名前の通りまさに透き通るような美しい青色。
一口頬張ると、愛媛県産七折小梅の上品で高貴な香りがふわっと広がります。
もちっとした食感とともに味わう爽やかな風味は、まるで瀬戸内の潮風を感じているようです!
見た目の美しさだけでなく、口の中に広がる豊かな味わいに感動しました。
雪の下は、ミルクの豊かなコクと梅の酸味が絶妙に調和した一品。仕上げにかかった氷もちが本当に雪のようで、食べるのがもったいないほど美しい!
一口食べると、ミルクのまろやかな甘さの後に梅の爽やかな酸味がアクセントとなって、最後まで飽きることなく楽しめます。
とらやきは「月影」と「月虎」、「みか月」の3種類。
月影は、宇和島産きぬ青のりと藻塩のあんを使った、他では味わえない独特などら焼き。一口食べると、海苔の豊かな香りが鼻に抜けて、藻塩の優しい塩味がクセになります。月虎はしゅまり小豆の粒あんが主役の、王道どら焼き。シンプルだからこそ、素材の良さが際立つ正統派の美味しさです。みか月はバタークリームと小倉あんが調和した、洋と和の絶妙なバランスが楽しめる一品。柑橘のほんのりとした苦みがアクセントになって、最後まで飽きることなく味わえます。
続いていただくのは、暑い夏にぴったりな葛もちアイス!見た目はアイスクリームのようですが、これは葛粉を使った和菓子風アイス。みかんやいちご、ブルーベリーなど様々なフルーツフレーバーがあって、選ぶだけでも楽しい!実際に食べてみると、ぷるんとした独特の口あたりがクセになる美味しさです。アイスなのにどこか和菓子らしい上品な甘さで、子どもから大人まで楽しめそうです。
最後はお店の代表的な商品をいただきます。
椀舟最中は、香ばしい最中の皮とシソが香る小倉あんの組み合わせが絶妙!パリッとした皮を割ると、シソの爽やかな香りがふわっと立ち上がります。小倉あんは甘すぎず、どこか懐かしい味わい。かつて瀬戸内の海を行き交った帆船「椀舟」の歴史に思いを馳せながら味わうと、より一層美味しく感じられます。
二代目の発想から生まれたフルーツ大福は、なんと約20種類も!その中の愛媛県の特産品「紅まどんな」を使った大福は、一口頬張ると、紅まどんなの爽やかと濃厚な甘さが広がります。もちもちの求肥の食感と白あんの上品な甘さが堪らない!果汁が口いっぱいに広がる瞬間は、まさに至福のひととき。
一福百果・清光堂で過ごした時間は、愛媛県の豊かな自然の恵みと、三代にわたって受け継がれてきた職人の技と想いを肌で感じられる貴重な体験でした。
伝統を大切にしながらも常に新しいことに挑戦し続ける姿勢、地元の素材への深い愛情、そして何よりもお客様一人ひとりの想いに寄り添う温かい接客。
これら全てが合わさって、多くの人に愛される特別な場所になっているのだと実感しました。
「見たことない!」と思ってもらえるような商品を一年を通して提供したいという大西さんの言葉通り、毎回新しい発見がありそうなお店です。愛媛県を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。
素敵な和菓子との出会いが待っていますよ。
一福百果・清光堂
愛媛県今治市郷桜井3-4-5
電話番号:0898-48-0426
営業時間:10:00〜18:00
定休日:日(第1、第3を除く)・月曜日