愛南 市場食堂
鮮度にこだわるまじめし
究極の「びやびや」を味わえる食堂だった
ライターの小郷です。今回は食べるとかつおの概念が変わるという「びやびやかつお」を求めて、南予・愛南漁協深浦本所の敷地内にある食堂、市場食堂さんに向かいました。
あいにくの雨でしたが、市場が見えてくると新鮮な魚に出会えそうな雰囲気に期待が膨らみます。
愛南漁協深浦本所の漁民厚生施設の1階に市場食堂はあります。
のれんをくぐって、いざ!店内へ
小郷:おはようございます〜
開店前の誰もいない店内に声をかけると、「はーい!」と厨房の更に奥から魚を捌いている手を止めて、出てきてくださった店主の田下さん。赤い長靴がかっこいい・・!
早速、お店についてお話を聞きました。
20年ほど前に誕生した市場食堂は、田下さんが4年前に店主となり、お店もリニューアルしました。
平日の多い日は1日に80人、休日は150人ものお客様が…!
お店は主に、店主の田下さんが裏で魚を捌いて、奥様が盛り付けや接客を担当されています。
今年のゴールデンウィークにはなんと合計100kgもの魚を田下さんが一人で捌いたとか!!
小郷:こちらで食べられる魚はどんな物があるんですか?
田下さん:まあ今やったら鯛とシマアジとかつおになるんですけど時期によっては媛スマも。基本的にはこの種類でやってます。
田下さん:ほぼ90%以上が愛南町外のお客さんで、多くの人がびやびやかつおを求めて来ますね。
小郷:びやびやかつお?
田下さん:日戻りで釣り上げてすぐに活け締め血抜き処理させたのがびやびやかつおです。
小郷:その日捕れたものをその日に食べれるんですか??捕れたても捕れたてのかつおなんですね!!
田下さん:そう!船の上で神経締めまでしているのでほんとに新鮮!歯ごたえが抜群で噛みきれないくらいモチモチしてるんです。
びやびやかつおとは釣ったその日に水揚げされたカツオをその日のうちに食べる鮮度抜群の贅沢な逸品です。
小郷:ちなみに・・びやびやってどういう意味なんですか?
田下さん:「びやびや」とは地元の方言で「新鮮」という意味。時間がたつと捌く前の魚も固くなってきてピーンとした状態になるんやけど、釣りたての魚はまだぶらぶら柔らかい感じでそれをこの辺りのひとは「びや」というんです。
話しを聞けば聞くほど、かつおへの期待が高まります!!早く食べたい!!
そして、今回は特別にかつおを捌くところも見せていただきました。
田下さん:割と小さめのやつなんやけど、昨日水揚げされたかつお。目がきれいでしょ?
小郷:ほんとだ!透明感がありますね。黒目もはっきりしてる。
小郷:魚は昔からよく捌いていたんですか?
田下さん:んー。元々釣りもしてたから、全く捌けないわけではなかったけど、別に刺身にしてたとかというわけじゃないから・・かつおに関しては店を始める前にほんと3匹くらい捌いただけ。母親に捌き方、教えてもらいながらね。
小郷:えー!その状態からお店始められたんですね!!
話をしながらもどんどんかつおを捌いていきます。
包丁は市販の物を買って来ては自分の使いやすいように削って形をつくっているこだわりの物。この包丁で1日に何キロもの魚を捌きます。
華麗な包丁捌きにみとれている間にあっという間にお刺身に・・
おいしそう!!!!
目の前でかつおを捌くのを見せてもらい、お腹の減りは最高潮。
ということで、楽しみしていたびやびやかつおを頼もうとすると・・・
田下さん:今日はびやびやカツオ入荷ないんですよ。船が入ってくる来ないで入荷がかわってくるんです。
小郷:わ〜・・なんと・・・
「びやびやかつお」は、今まではその日お店に来てみないと、入荷しているかわからない、運が良ければ食べられるほどの幻のものだったのです!
お店に入荷状況を電話で確認するお客様もたくさんいる為、できるだけたくさんの方に食べてほしいと思い、近年はSNSで入荷状況をお知らせしてくれています。
田下さん:LINEの友達登録も4500人ほどいて、コメントで質問があるとできる限り返信もするように心がけてます。情報を見える化することで、多くのお客さんに喜んでいただくことができているのかなと。まずは知ってもらわないと始まらないんでね。
今日は残念でしたが・・・これも市場食堂の楽しみ方ですね!
他にもおすすめメニューは盛りだくさんですので、気を取り直して!今回は鯛のごまだれ丼とかつお刺身をいただきたいと思います。
鯛のごまだれ丼にカツオのお刺身がついていて鯛とカツオの両方が味わえるとても魅力的なメニューになっています。
まずはかつおのお刺身から・・・
小郷:身がめちゃくちゃきれい・・・
この身の分厚と、美しさ、見た目も今まで見たかつおとは全然違う!
目の前に並ぶきれいなお刺身に思わず顔がにやけます。
では、いただきます〜!!
小郷:ん!!!???ん??
小郷:んーーーー!何これ!!!私の知ってるかつおじゃない!!!?え!?かつお!??え!!?
(興奮しすぎて語彙力が・・・笑)
田下さん:全然違うでしょう〜 僕もサラリーマン時代に日戻りかつおを食べて、その新鮮さにびっくりして・・・
小郷:甘くておいしいです。びやびやかつおじゃなくても十分概念が変わりました・・本当にかつおの生臭さが全くないし、歯ごたえがびっくりです。
田下さん:びやびやかつおはもっともちもちするんですよ。捌く時も包丁に身がまとわりついて、切るんがほんとに大変!
小郷:これだけおいしいのに更に新鮮なびやびやかつおって・・・気になりすぎます・・これはまた食べに来ないと・・
市場食堂さんで提供しているびやびやとついていないかつおも前の日に水揚げされた物を次の日の朝から出しているものなので、普通のかつおでも十分新鮮な物なのです!!!
続いてふかうら真鯛のごまだれ丼をいただきます。ごまだれ丼はあまり他では見かけないメニューとのこと。
そのまま食べてもおいしい鯛にごまだれをかけるとは・・より贅沢です!ごまだれをたっぷりとかけ、たまごとかき混ぜて、口いっぱいに頬張ると・・・・
小郷:ん〜!!何この歯ごたえ!弾力がすごい!!!!普段食べている鯛とは全然違う!!おいし〜〜〜っっ!ごまの香りもいい!!
田下さん:鯛って全国どこでも食べれると思われてるけど、うちの鯛は近くの高安水産さんから朝仕入れたものを出していて。まだ死後硬直してないやつやけん、全く違うんですよ。お客さんが求めてくるびやびやかつおと同じでびやびやの鯛なんです。普通の鯛とは全く違うものだからぜひ食べてみてほしいです。前日の鯛は一切出していないから!
小郷:びやびやの鯛・・こだわりはかつおだけじゃないんですね!
市場食堂で出している真鯛はふかうら真鯛という養殖の鯛で愛媛県愛南町の株式会社安高水産が手掛けるブランド養殖真鯛です。
ただでさえ、高い基準をクリアした鯛ですが、市場食堂で出しているものはわざわざ出荷場などで販売するものとは別に市場食堂さんや限られた業者さんの為だけに一匹一匹手で神経を抜いて30分氷水でしめたまだ死後硬直前の本当に貴重なこだわりの鯛です。
貴重なお話を聞きながらおいしくいただきました!
ごちそうさまでした!!
お腹もいっぱいになったところで・・
壁にかかっているピンクや青のカラフルな飾りのような物が気になり・・・
小郷:この飾りみたいなやつは何ですか・・・?
田下さん:これはかつおを釣る時に使う疑似餌針!
小郷:へー。こんなカラフルなんですね!!
かつおのいる漁場に行って餌の撒き、同時に撥水ポンプで大量の水を撒くことで水面が沸き立ち、大量のイワシの群れと勘違いしたかつおが興奮状態になって捕食しようとします。これを、擬似餌針のついた釣竿で、一匹一匹釣りあげるそうです。
実際の一本釣りの様子を見せていただきました。
小郷:すごいスピードでどんどん釣り上げていってるんですが・・全くかつおに触れてもないし、どうなってるんですか??
田下さん:かえしがない針だから、頭の上くらいまで引き上げると、かつおが跳ねて針から外れ、外れたらそのまま針を海に投げ込んで、また釣っての繰り返しでどんどん釣っていくんです。
小郷:プロですね・・こうやって技術のある漁師さんが捕ってくれるから新鮮でおいしいかつおが食べられるんですね。
田下さん:うちは市場にある食堂だから、新鮮な物をださないと意味がない。お客さんが増えても鮮度が落ちるようじゃ意味がないからそこは特に気をつけてます。
小郷:かつおも鯛も本当に新鮮でびっくりしました。
田下さん:びやびやかつおに関しても今日入荷したら明日までびやびやかつおを名乗れるんですが、当日の数時間の内に食べないと価値が無いと思っているので水揚げされた当日の物をぜひ味わってほしいです。
と真剣な目で話をしてくれる田下さん。新鮮な物を提供したいというお客さまへの思いが話の端々からうかがえ、まじめさがにじみ出ています。
そんな田下さんに「あなたにとってのまじめとは」とは何か、聞いてみました。
田下さん:自分の想い(考え)を貫くこと。
自分の中で決めたもの、譲れないものを貫き通すことですね!
田下さん:まわりの景色を楽しみながら、おいしいものも揃っているので、観光がてらぜひ来てください。
お客様に新鮮な物を食べて欲しいという田下さんの思いとかつおや鯛に対するまじめな思いに溢れた市場食堂。皆さんもぜひ一度体験してみてください!
びやびやかつおを求めてまた伺いたいと思います。
愛南 市場食堂
住所 :〒798-4351 愛媛県南宇和郡愛南町鯆越166-4
電話番号:0895-73-2556
営業日:平日9:30~15:00/日・祝10:00~15:00(ラストオーダー14:30)
定休日:月曜日