忙しい日々に寄り添う食堂

だしとお米 和厨

和食の基本に真摯に向き合い、出汁とお米にこだわるお店を取材!

こんにちは、まじめしライターの野本鈴夏です。
突然ですがみなさん、好きな料理のジャンルは何ですか?和食や中華、イタリア料理、韓国料理など…。
いろいろありますが、日本人が好きなジャンルで最も多い答えは「和食」なんだそうです。
「和食離れ」なんて言葉もよく耳にしますが、時代が変化しても、和食の魅力は変わらない!私も和食大好きです!食べるとホッとしますし、身体にじんわりと染みわたりますよね。

今回ご紹介するのは、そんな和食の基本に真摯に向き合い、その魅力を丁寧に届けている「だしとお米 和厨」。お米と出汁にとことんこだわった料理の数々には、作り手の想いがたっぷり詰まっていました。

早速お店に潜入!

お店があるのは、真珠や真鯛の養殖、柑橘の生産量が日本一の宇和島市。宇和島城のすぐ側、街中のビルの一角に、ひっそりと佇んでいます。中に入ると、ゆっくり食事が楽しめそうな落ち着いた空間が広がっていました。たっぷり差し込む日差しが気持ち良くて、つい長居したくなってしまいます。

今回いただくのは、ランチメニューの「ハレ御膳」と「和厨のお弁当」。ハレ御膳は名前の通り、食べると特別な気分になる、ちょっと贅沢したい日にぴったりの御膳!和厨のお弁当は、ピクニックや外で楽しむお昼ご飯などにぴったり。丁寧に仕込まれた美味しいおかずが気軽に味わえます。

それではいただいてみましょう!
食レポは同行したまじめしライターの眞弓が担当します!

ハレ御膳と和厨のお弁当、いただきます!

ライターの眞弓莉沙子です。今回の食レポは私が担当します!

まずは、月ごとにメニューの種類が変わる「ハレ御膳」から。
席に届いてまず驚くのは、たくさんの彩り豊かな小鉢!旬の食材を最大限に活かしたお料理がお盆の上に所狭しと並んでいます。

主菜はAセットとBセットの2種類があり、どちらかを選ぶことができるのですが、どっちも捨て難いという方には、AとBの両方が頼める ウルトラC!ならぬCセットもご用意があるとのこと。優柔不断な私にとっては嬉しいことこの上ありません!

取材時に訪れた時は、Aセットに天ぷら盛り合わせ、Bセットにデミソースのメンチカツと、ボリューム満点な主菜でした!

それでは早速いただきます!

実はこのCセット、男性人気が圧倒的だと思ったのですが、男性はもちろん、女性の方もペロリと平らげるんだそう!2種類の主菜はともにボリュームはありますが、優しい味わいなのでお箸が進むんです。

続いてはお刺身。毎朝市場から新鮮な魚種を選んで届けてもらっているそうで、今日は鯛のお刺身!黄身醤油を付けていただきます。一口食べると、ぷりっとした食感とともに、鯛の上品な甘みが口いっぱいに広がります。

ちなみに、筍と蓬麩、薄揚げの煮物は、土の中から緑と筍が見え隠れするような春の情景をイメージしているそう。味でなく目で見て楽しいお料理があるのも、和食ならではですよね。

たくさんある小鉢の中で、私のお気に入りはアンチエイジング・ポタージュ。

かぼちゃをベースにしていて、一口啜ると野菜の甘味が口いっぱいに広がります。「アンチエイジング(*1)」ということなので、肌や髪への美容効果も期待できるとのことです!

(*1)加齢による身体や肌の変化をできるだけ緩やかにして、若々しさや健康を保とうとする考え方

もちろんお米にもこだわりが!五つ星お米マイスター(*2)の資格を持つ松山市のお米屋さんが選んだ品種を、月替わりで取り入れているそう。

(*2)お米に関する専門知識や技術を持つ、お米のスペシャリスト

この日のお米は愛媛県久万高原町の清流米 コシヒカリ。艶やかで噛めば噛むほど甘みを感じるご飯は、おかずにもしっかりマッチします!

付け合わせの豚肉味噌と一緒に食べれば、ご飯が進む進む!なんと、このご飯のお供は出汁殻が使用されているんだとか。「うちでは『無駄なく美味しく』を大切にしているんです。」とスタッフの伊藤さん。

伊藤さん:毎朝、煮炊きものに使う出汁を取っているんですが、料理用とお味噌汁で用途に応じて分けて準備しています。 出汁を取った後には出汁殻がたくさん出るんですが、実はその出汁殻に栄養が9割残っているんです!栄養を丸ごといただけるよう、すべて細かくして、調味料やもろみ味噌と合わせて練り上げています。もろみ味噌のもろみは、地元のお醤油屋さんのものを使用しているんですよ。

豚肉味噌は食べ応えがあって、出汁やもろみ、味噌の旨みがギュッと詰まっています!
こちらのご飯のお供は、お店でも販売されています。ぜひお家でも味わってみてくださいね。

お料理を楽しんだあとは、追加注文したお茶菓子とコーヒーを楽しみます。

お茶菓子は、宇和島市内の商店街にある「菓子舗こうの」さんの練り切り。毎朝その日に提供する練り切りが届くそうです。季節に合わせたものが用意されていて、注文時に好きなものを選ぶことができます!

この日はトキワバイカツツジをモチーフにした可愛らしい練り切りで、食べるのがもったいないぐらい!
上品な甘さが食後のデザートにぴったりです。

さて、実は和厨さんでは、お弁当の販売もしているんです。こちらも気になったので、注文してみました!せっかく暖かい陽気なので、近くの公園でいただきます。

お弁当と侮るなかれ!見てください!この豪華さ!
海老フライや白身魚の春色揚げなど、10種類を超える旬のおかずが入っています。おかずの下におかずが隠れているほどで…。何から食べるか悩んでしまう…。

特にお気に入りは、この鮭の西京焼き。味噌の風味が白ごはんとの相性抜群で食欲を加速させます。
お店の人気メニューで、焼き立てをお持ち帰りすることもできますよ!

お弁当は前日の午前中までの事前予約制で、2個から予約可能です。内容はおまかせで、金額を指定すれば、その金額の範囲内で用意してくれるんだそう!テイクアウトでもこんな豪華なお料理を楽しむことができるのは嬉しいですよね。ぜひ味わってみてください!

以上、眞弓がお届けしました!まじめしライターの野本にバトンタッチします。みなさま、ありがとうございました!

ありがとうございました!私もいただきましたが、料理ひとつひとつから手間ひまを惜しまない丁寧な仕事ぶりが感じられて、ひと口ごとにじんわりと心がほどけていくようでした。
ここからは、気になるメニューのこだわりやお店のことについて、スタッフの伊藤さんにじっくりお話を伺っていこうと思います。

魅力が伝わらなければ、ないのと同じ

野本:早速ですが、お店を始めたきっかけについてお聞きしてもよろしいですか?

伊藤さん:私とオーナーは、10年近く一緒に飲食店で働いてきました。オーナーは京都の日本料理店で料理長を務めていた経験もあり、『お米とおだしという和食の基本にこだわって、自分たちが本当に食べたいもの、作りたいものを形にしてみよう』という想いがありました。そして、オーナーの出身地である宇和島で、お店を始めることになったんです。

野本:そうだったんですね。和食の原点に立ち返る!和食に対する真っ直ぐな想いが伝わってきます。では、お店のこだわりについて、詳しくお伺いできますか?

伊藤さん:お米は、やっぱりちゃんとしたお米屋さんから仕入れたいと思って、オープン前に松山市まで足を運んで探しました。宇和島市ではなかなか希望に合うお店が見つからなくて、最終的には松山のお米屋さんに突撃してお話を聞かせてもらったんです。そこの方がお米マイスターの資格を持っている、お米に対して熱い方で。オープン前にはわざわざこちらまで来てくださって、お米の研ぎ方まで丁寧に教えてくれたんですよ!

一番のこだわりは「炊いたお米を保温しすぎないこと」です。ご飯は保温時間が短ければ短いほど美味しいんです。うちは11時オープンで、ラストオーダーが14時15分なんですが、その間に1時間おきくらいで2〜3回ごはんを炊き上げています。だから保温時間が1時間以上経たないようにしています。お米の銘柄は、毎月お米マイスターの方と相談しながら選んでいます。粒の大きさや味、食感などを見比べながら、料理に合わせて決めています。
こちらの地域だと、お家が農家という方も多いですし、お米に対して「美味しくない」なんていうことは、きっとあまりないと思うんです。でも、そういう当たり前にある主食が、銘柄や炊き方の違いで味わいが変わることに気づいて、感動してもらえたら嬉しいなと思っています。

野本:お米って「炊きたてが一番」とは言いますが、ここまで徹底しているお店は珍しいのではないでしょうか!?お米が当たり前にある主食だからこそ、その美味しさにちゃんと向き合えそうですね。御膳のご飯も美味しかったですが、お弁当のご飯も冷めていたのに美味しかったです。

伊藤さん:ありがとうございます!うちのお弁当が前日の午前中までの予約制なのには理由があって、お弁当用のお米は、通常とは炊き方を変えているからなんです。注文をいただいた数に合わせて、その分量だけを研いで炊いています。

野本:冷めたお米ってパサついたり固くなったりするイメージがありますが…。

伊藤さん:そうなんです。冷めると、お米が持ち上げにくくなったり、ぼそっと崩れたりすることがあるんです。水分量を少し多めにして、しっとり感を残して炊き上げるように工夫しています。

野本:なるほど、だから冷めても美味しくいただけたんですね!今回いただいたハレ御膳も、そんな丁寧な工夫が詰まっていて、季節感が感じられる料理ばかりでした。月ごとに献立が変わると伺いましたが、そうしたメニューはどのように決められているんですか?

伊藤さん:月末ごろにスタッフ全員で集まって、その月の旬の食材を活かしたメニューを考えています。春には山菜や筍、きのこなど、季節のものを楽しんでいただけたら嬉しいですね!メニュー表の写真を撮ったり、説明文を作ったりもすべて自分たちでやっているんです。素人ながらなんですけど、できることを一生懸命やっています!

野本:とっても素敵です!説明文から料理への愛情やこだわりが伝わってきます。どんな想いで作られているのかが伝わると、料理がより一層美味しく感じられそうです。

伊藤さん:ありがとうございます。私はこれまでずっと作り手として厨房に立ってきたので、お客様と直接関わる機会はあまりなかったんです。料理を作ることには一生懸命だったんですが、それをどう伝えるかという部分は苦手で。でも、以前企業の加工食品部門を担当していたとき、メーカーの方から「伝わらなければ、ないのと同じ」って言葉をいただいたんです。料理の魅力を文字やビジュアルでどう届けるかということを、とても大切に考えるようになりました。

野本:作るだけじゃなくて、ちゃんと伝えることまで含めて料理なんですね。その姿勢、すごく素敵だなと思います。そんな伊藤さんたちが、これからお店をどうしていきたいと思っているのか、気になります。

伊藤さん:他のお店さんもいろんなメニューを出されていますが、うちはハレ御膳だけ。加工食品を使わず、出汁も一から丁寧に取り、すべて手作業で、心を込めて作っています。食べたときに「手が込んでいるな」とか、「ほっこりするな」って感じていただけたら嬉しいですね。
本当にみなさん忙しい日々を過ごされていると思うので、たまには外で、温かいごはんを食べて、ふっと肩の力を抜けるような。そんな、心がちょっと安らぐ場所になれたらいいなと思っています。

野本:忙しい毎日の中で、出汁を丁寧に取ってごはんを作るのって、なかなか難しい方も多いと思います。だからこそ、こういう場所があると、本当に心がほっと安らぎますよね。それに、出汁を取るって聞くだけで「なんだか難しそう」と感じている方も、きっと多いんじゃないでしょうか。

伊藤さん:そうですよね。そんな方に向けて、うちでは料理教室もやっています。出汁を引くところから始めて、煮物、焼き物と順番に学んでいくスタイルです。意外と親子でのご参加が多くて「和食を子どもに体験させたい」「一緒に学びたい」という気持ちで来てくださっています。

野本:食育としても意味がありますね。「こういう料理を作ってみたい」といったリクエストにも対応されているんですか?

伊藤さん:もちろんです。たとえばさつま汁(*3)とか、郷土料理を作る回もありました。なかなか自宅では作らない料理ですが、だからこそ「知っておきたい」と思ってくださる方が多いようです。

(*3)魚の身をほぐし、麦味噌と混ぜて出汁でのばしたものをご飯にかけて食べる、宇和島市の伝統料理

伊藤さんにとって「まじめ」とは?

野本:最後に、伊藤さんにとっての「まじめ」をお聞かせください!

伊藤さん:飲食店で働く皆さんがそれぞれ、日々真剣に取り組んでいると思います。 私自身は、「本質を徹底すること」をずっと大切にしてきました。 料理人として、当たり前のことを、誰よりもしっかりやる。それが一番大事なことだと思っています。それと、最近よく言われているフードロスの問題もそうですが、私たちは「食材の命を敬う」という気持ちをとても大事にしています。 食べていただく命に感謝しながら、無駄にせず、丁寧に扱う。それがまじめな取り組みのひとつだと思っています。

「だしとお米 和厨」で過ごしたひとときは、心と体をゆっくりほどいてくれる、まさに日常のご褒美のような時間でした。素材にこだわり、手間を惜しまず、心を込めて作られた料理は、口に運ぶたびに、ほっとする味わい。「伝わらなければ、ないのと同じ」——そんな言葉を胸に、今日も丁寧に美味しい和食をお客さんに届けています。

忙しい日々の中で、ふと立ち寄りたくなる、心の拠り所のようなお店です。ぜひ宇和島にお越しの際には、立ち寄ってみてくださいね。

だしとお米 和厨

宇和島市中央町1-10-15 サンビル1F
電話番号:0895-22-7220
営業時間:ランチ11:00〜14:15(L.O.)/カフェ13:30〜15:30
定休日:月曜日

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